韓国首相の弾劾訴追案を可決、大統領代行は初…可決ライン巡り与野党対立
【ソウル=依田和彩、小池和樹】韓国国会(定数300)は27日の本会議で、尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の権限を代行する韓悳洙(ハンドクス)首相の弾劾(だんがい)訴追案を可決した。大統領代行の弾劾訴追は初めて。韓国では尹氏の戒厳令宣布後、国政の混乱が続いている。
韓氏の職務は停止され、崔相穆(チェサンモク)副首相兼企画財政相が大統領権限を代行する。崔氏は国会議員ではなく、企画財政省出身だ。同省第1次官などを歴任し、2023年12月から現職にある。
憲法裁判所は180日以内に韓氏に対する弾劾審判を行う。保守系与党「国民の力」は反発し、憲法裁に韓氏の弾劾案の効力停止を求める仮処分を申し立てた。
与野党は韓氏の弾劾案の可決ラインを巡り、対立した。弾劾案を提出した左派系最大野党「共に民主党」は首相の弾劾とみて在籍議員300人の過半数の賛成が必要との立場で、「国民の力」は大統領の弾劾訴追に準じて3分の2以上の賛成が必要だと訴えていた。
「共に民主党」出身の禹元植(ウウォンシク)国会議長は採決にあたり、首相の弾劾に必要な在籍議員の過半数の賛成が可決条件と表明。与党議員は大部分が採決に参加せず、禹氏に抗議する議員もいた。投票総数は192票で全員が賛成した。
韓氏は14日に尹氏が弾劾訴追されたことを受け、職務を代行してきた。「共に民主党」は欠員となっている憲法裁の裁判官の任命に韓氏が応じなかったなどとして弾劾訴追案を提出した。
一方、尹氏の弾劾訴追を審理する憲法裁は27日、争点などを整理する1回目の弁論準備手続きを行った。
憲法裁は、尹氏が3日夜に宣布した戒厳令の違憲性や違法性などを争点として示した。尹氏側は、尹氏に対する弾劾訴追自体の適法性も争う考えを示した。次回は1月3日に行われる。
一方、検察は27日、尹氏に戒厳令宣布を建議した金龍顕(キムヨンヒョン)前国防相を内乱罪などで起訴した。