歴史の継承かアップデートか…“動物虐待”との批判で揺れる『上げ馬神事』700年の伝統が迎えた転換期
伝統の継承か、それとも廃止か。
■獣医の配置に勉強会の開催…アップデートを選んだ伝統行事も
時代の変化に合わせ、趣向を凝らしながら「アップデート」を選んだ伝統行事がある。300年以上続くとされる新潟県小千谷(おぢや)市の「牛の角突き」は、国の重要無形民俗文化財に指定されている闘牛の祭りだ。
小千谷闘牛振興協議会の会長: 「牛は戦いが好きなんですね、結構出て行くところから喜んで出て行く。それを楽しませて、一緒に楽しむ感じ」 犬や猫がじゃれあうように、角を突き合わせるのが好きだという牛に「無理強い」するのではなく、その習性を生かしている。 「じゃれあい」からヒートアップしないよう、人の手で2頭を引き離すサポートもしている。
それでもこの日も、ヒビが入ったのか出血することもあり、ケガは付き物だ。
獣医: 「ちょっと先が欠けているかも」
飼い主: 「そうですね」 獣医: 「根元に今薬塗ったので、しばらく痛いと思うわ。そっとしておいた方がいい」
これも、時代に合わせた「アップデート」のひとつだ。 小千谷闘牛振興協議会の菅会長: 「私達の所では、やっぱりケガとか病気が非常に重要になって。2013年に動物愛護法の改正、その時に動物同士を闘わせるということが議題になったので、獣医を入れるとか、様々な対策を取った」 万が一に備えて、会場に獣医を常駐させるほか…。
祭りの関係者が、動物愛護への理解を深めるための勉強会も開催。
「上げ馬神事」とはスタイルが異なるものの、これまで批判的な意見は寄せられていないという。
■「上げ馬神事」の今後は…専門家「納得いく形で維持することを前提に」
「上げ馬神事」は今後どうしていくのがよいのか、動物福祉の専門家に話を聞いた。 中部大学特任講師・アニマルウェルフェア国際協会・上野吉一会長: 「ほとんど偶然を狙ってしかできないことをさせている。無茶なことをさせている。約700年大きな流れとして続いているのかもしれないけど、今の時代に合わせた変化というものを『なぜ受け入れられないんですか』という声も意識する必要がある」