苦境の学校、「教員不足とメンタル」問題の深刻 誰もが危機感を持っているのに解決しないなぜ
教員不足のいちばんの被害者は子どもたち
学校現場の教員不足が依然として深刻だ。教員になりたいという学生自体が減っており、教員採用試験の倍率が低迷。正規教員の希望者が減ると、教採の不合格者も減り、講師として働きながら正規教員を目指す人も減る。すると現場で欠員が出た際に代替できる先生も減り、ただでさえ忙しい学校現場がさらに多忙化する。人員に余裕がないと無理をする、同僚のフォローができなくなる、限界が来て休職する人も増える……この出口の見えない学校現場の負のスパイラルを断ち切るにはどうしたらいいのか。教育研究家の妹尾昌俊氏に解説いただいた。 【調査結果】文科省調査では5%だった教員不足が、教頭会調査では20%の学校で起きていた ・担任が不在になった際の学習指導が滞った。プリントが中心の学習。(沖縄県小学校) ・受験生に対し、免許外の教師が授業を行うということが起こった。(愛知県中学校) ・3人に社会の臨時免許を持たせ、社会科未経験の先生が各学年に教えている。受験生の保護者からクレームがある。非常に混乱している状態。(鹿児島県中学校) ・育休代替講師が見つからず、自習で対応せざるを得なかった。(山形県中学校) ・病休補充の講師が見つからず、2クラス合同での授業を実施しなければならない状況になった。(岩手県中学校) 教員不足、講師不足に歯止めがかからない。冒頭で紹介したのは、「#教員不足をなくそう緊急アクション」※が全国公立学校教頭会の協力を得て今年4月に実施した調査で、小中学校の副校長・教頭からの声の一部だ。 ※日本大学・教授の末冨芳氏、教職員の声を政策に届けるSchool Voice Project、妹尾昌俊氏による有志のチーム 教員不足とは、欠員状態を指すが、各地の学校で慢性的な人手不足となっている。労働力人口が減る中、あちこちの業界でも人手不足かもしれないが、教員不足のいちばんの被害者は、これからの社会を担う子どもたちであり、看過できない。 直近では実際、どのくらい欠員となっているのか。実は文部科学省も、誰も全国的な正確な数字を把握できていない。文科省は2021年度の4月、5月の状況を調査したきりで、あとは各教育委員会に「昨年度より悪化しましたか」などという、ゆるい調査しかしていない。こんなことでは実態をつかめないし、必要な予算を取っていくうえでも、政治家や財務省などに説得的に示せないと思うのだが。 この文科省調査(2021年始業時点)では小学校の4.9%、中学校の7.0%で不足があるという結果だったが、事態は一層悪化している可能性が高い。 次のグラフは、全国公立学校教頭会によるもの。悉皆ではないが、全国の約70%の小中学校の教頭職(副校長含む)が回答したのだから信憑性は高い。これによると、昨年度の年度初めに不足していたのは、小学校の11.5%、中学校の12.1%であり、前述した文科省調査の倍近い(両者で「不足」の定義が違っている部分もあること、また、回答者が教委なのか、学校側なのかの違いもある点は注意)。 しかも、年度途中に欠員となるケースも多い。これを含むと、2022(令和4)年度は全国の小中学校の約2割で教員不足が起きている。文科省調査の5%と、教頭会調査の20%では、政策を考えるうえで大違いだ。