<ザ・ファブル>“巨匠”高橋良輔監督インタビュー 人気作をどうアニメ化するのか?
「オファーがくる前は原作を知りませんでした。普段は、自分の仕事に近いところなのに、マンガやアニメをあまり見ないものでして。マンガを読んで、実写映画も見たのですが、実写はこういうアプローチなんだ……と。多分、役者さんのアクションの能力を最大限に生かすという方針で作っていたんじゃないかな? 面白かったですね。僕は、エンターテインメントは刺激物だと思っていますし、刺激が強く、登場人物もみんな魅力的で、面白く読ませていただきました」
高橋監督は「今のアニメーションの状況を見ると、可愛い女の子がたくさん出てくる作品が多いですし、『ザ・ファブル』は異色な方だと思っています」とも話す。
「原作の南先生もおっしゃっているように、キャラクターのリアリティー、実在するかもしれないという存在感が大事になってきます。私が育った環境では、主人公はともかく、それ以外は比較的なじみのあるキャラクターなんですよ。若頭(カシラ)の海老原は理想的に描かれてはいますが、ああいうタイプがいないわけではなかった。小島も砂川のようなタイプもいた。宇津帆は知能犯ですが、それを気取っている人もいないわけではなかった。どうしよう?ということはなかったですね。ヤクザの組織も普通の会社組織もなりわいが違うだけで、そこにいる人の心情はそんなに変わらないですよね」
高橋監督は「アニメ制作の現場で、僕もカシラと言われることがありました」とも語る。
「ヤクザの若頭じゃなくて、町内のカシラですね。昔、町内に祭りの世話をしたり、塀を直したり、技術を伴った力仕事をするカシラがいて、その土地に根付いていたんです。仕事の仲間の安彦良和さんに『カシラに似ているよね』と言われたことがありました。監督の一部の仕事には、そういうところがあります。アニメやマンガは、座って仕事をするけど、僕は全然座っていませんから。座るのが嫌いだから、スタジオ内をウロウロしています。文章も絵も書かないわけじゃないんですけど、あんまり落ち着いて書いていませんね。僕はあまり仕事が好きじゃないですから。安彦さんは仕事が好きで、すごく真面目に仕事をする。僕はちょっと先輩なのですが、しょうがない先輩だな……と思われていたのかもしれません。今もあんまり座りません。30分と座っていられないタイプです。だから腰痛がないですよ」