<ザ・ファブル>“巨匠”高橋良輔監督インタビュー 人気作をどうアニメ化するのか?
◇佐藤だけモデルがいない
佐藤明は「よく分からない」キャラクターだ。幼少期から殺し屋としての英才教育を受けてきたこともあり、普通の人とは感覚が違うところも多い。その違いがコミカルに見えるところもある。
「僕の中で、佐藤だけモデルがいない。佐藤だけは明らかに作家の創作物。アニメやマンガの主人公は、可愛い目をしていることも多いのですが、佐藤は白目の印象が強い。無慈悲というよりは、ミッションとして殺しを遂行するとなると、こういう目になるんじゃないかなぁーと思って……原作の意図をくみ取って、ああいう目にしています」
個性豊かな登場人物の会話劇も作品の大きな魅力になっている。生っぽさを感じるところもある。
「間に関しては、僕ら以上にファンの方が気にしているんですよね。マンガの吹き出しの語尾に縦線が入ることがありますよね。例えば、『やんなっちゃったなーー』の『--』は伸ばしているのか、それとも『……』なのか。そういう疑問があるかもしれませんが、南先生にも確認して、その時に応じて、決めつけずに表現しています」
とにかく強い佐藤明のアクションも見どころになりそうだが……。
「実写映画を見たこともあり、アクションが多くなるのかな?とも思ったのですが、実際にシナリオを作り始めるとそんなに多くないんですよ。昔の野球マンガだと8割が試合で、一球投げるのに、一話使うこともありましたが、『ザ・ファブル』のアクションに関しては一瞬ですから。それは、佐藤の能力が高いからであって、そこに思考が入ることはほとんどなくて、反応で動いています。だからアクションは意外に少ないです。佐藤はさまざまな人と知り合い、コミュニケーションしていきます。そこが一番主なところになっています」
◇自分からあれをやりたいとは言わない
高橋監督はこれまで数々の作品の“次回予告”を手掛けてきた。「装甲騎兵ボトムズ」の次回予告の名調子は、伝説になっている。「ザ・ファブル」に関しては「ないんです。自分の作品以外にも、次回予告を担当することもありますが、今回は本編をなるべく多く見せたかったので」と明かす。