円が約38年ぶり安値、一時160円30銭台に下落-介入警戒感高まる
(ブルームバーグ): 26日の外国為替市場の円相場は対ドルで一時160円30銭台まで下落し、1986年以来の安値に沈んだ。ドル高・円安の進行を受けて、通貨当局による円買い介入再開への警戒感が高まっている。
高水準の日米金利差を背景に円売り・ドル買いの流れが止まらない。4月29日には160円17銭と約34年ぶりの円安水準を付け、政府・日本銀行は月次ベースで過去最大の9兆8000億円規模の円買い介入を実施した。しかし、約2カ月で円は上げを解消。90年4月の安値である160円20銭を下回り、0.4%安の160円39銭まで売られた。
円相場を大きく動かす次のイベントは、28日に発表される米個人消費支出(PCE)価格指数になるとみられる。PCEは米金融当局が重視するインフレ指標で、金利見通しに重要な鍵を握る。
ウェルズ・ファーゴのマクロストラテジスト、エリック・ネルソン氏(ロンドン在勤)は「ここ数日の日本の財務省当局者から発せられる言葉遣いは、懸念が増していることを示唆している」と指摘。ただし、介入には165円かそれを下回る水準まで円が下落するのを当局は待つ可能性があると述べた。
日銀の植田和男総裁は18日の国会答弁で、経済・物価・金融情勢のデータや情報次第では次回7月の金融政策決定会合での追加利上げも「十分あり得る」と述べた。ただ、7月会合では国債買い入れ減額計画を決定する予定で、市場では追加利上げの同時実施は難しいとの見方がくすぶる。
一方、今月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では参加者の金利予測分布図(ドットプロット)で年内の利下げ予想が1回と3月時点の3回から減少した。ボウマン米連邦準備制度理事会(FRB)理事は25日、インフレ見通しに対する幾つかの上振れリスクが見られるとし、政策金利をしばらくの間、高水準に維持する必要があるとの考えをあらためて表明した。
バークレイズのアナリストは、行き過ぎた円の下落を阻止し得る日米の金利差は4~4.5%ポイントで、この金利差が25年4~6月期より前に見られる可能性は低いと分析。円相場は年内1ドル=160円近辺で推移すると予想している。米フェデラルファンド(FF)金利と日本の無担保コール翌日物金利とのスプレッドは現在5%ポイントを上回っている。