『ミス ディオール展覧会』、女性アーティスト・江上越の作品が与える彩り。
――ミス ディオール展のために、女性アーティストの方々が創った作品を見て、いま、どんな思いを抱かれていますか?
不思議な感覚になります。普段、美術館ではホワイトキューブに作品だけを展示していますから、こうして、ドレスやミス ディオール(のボトル)と展示され、また、空間演出の流れの中でまるで旅路のように作品を見ていくことでも、感じるイメージが変わります。 以前も拝見しているのですが、どの作品も特別に感じますし、またひとつの世界観の中で一体化されていることでの不思議な感覚も覚えます。
作品を、引いて眺められる空間ですので、訪れた方には作品との距離感を楽しんでいただきたいです。 私の作品で言えば、近付いた時のテクスチャーの荒々しさや野性的で感情的な部分と、距離をとった時に浮かんでくる女性の身体性の柔らかいイメージといった、認識的な距離と物理的な距離の中で、色彩とストロークでどう表現しているのかに注目してみてほしい。女性が持つ、エレガンスと自由、繊細さと大胆さといった、内面の多面性を感じていただきたいと思っています。
(並べて展示されているマリア・グラツィア・キウリの黒いドレスを見ながら)このドレスがここにあることが、もう、びっくりしていて。この絵にぴったりだな!と思っています。 私の作品は、色やラインがとても大切な要素なのですが、ドレスもそれぞれの色がラインになって見えて、虹や流れ星のようなラインが、まるで自分の絵に続いているような感じがします。
――このドレスは、世界を巡っているミス ディオール展覧会でも初めて展示されたものです、偶然のような必然があります。
そうなのですね、知らなかった! 本当にびっくりしています。 他のミス ディオールのドレスはフェミニンなピンクやホワイトですが、この黒いドレスには、闇の中に光る魅惑的な美しさに新しい女性像、コンテンポラリーな女性像を強く感じます。
――中国をはじめ、世界各国で活動や展示を行うなかで、東京という都市、そして、ミス ディオールの展覧会の場で、作品を発表する意義をどのように感じていますか?
ミス ディオールはブランドとして、世界的に知られています。中国でも大変人気です。 東京は国際都市で、アジアで最もはやく近代化した都市でもあります。東京でのミス ディオール展覧会の場で自分の作品を発表することはなんだか歴史的な意味があるように感じます。近代から今日にいたって、世界は大きく変わってきました。西洋の美意識と東洋の美意識がぶつかりながら、交流と融合を深めた中に、多様な美しさの魅力に富んでいます。 東洋人として今回歴史あるブランドと同じ舞台で共演できることは、もちろん貴重な体験ですし、これから自分の制作をどのように考えるか大きなきっかけになるのでしょう。または、このリアリティが、時代の象徴として、東洋と西洋へのコミュニケーションは一層深まっていくと思います。