みんなで掲げた大きな「丸」。東海大山形が劇的ゴールで羽黒下し、10大会ぶり2回目の全国へ:山形
[10.26 選手権山形県予選決勝 東海大山形高1-0羽黒高 NDソフトスタジアム山形] 【写真】影山優佳さんが撮影した内田篤人氏が「神々しい」「全員惚れてまう」と絶賛の嵐 第103回全国高校サッカー選手権の山形県予選は、10月26日に山形県天童市のNDソフトスタジアム山形にて決勝が行われ、東海大山形高と羽黒高が対戦。1-0で勝利した東海大山形が10大会ぶり2回目の優勝で全国大会出場を決めた。 前半は双方硬さが目立つ展開。前半9分には相手のミスからボールを奪った羽黒FW佐藤惺空(2年)がシュートを放つが、枠をそれる。東海大山形も前半11分、相手DFラインのパス交換をインターセプトしたFW安食春平(3年)がフィニッシュまで持ち込むが、羽黒GK渡部拓海(3年)がシュートストップを見せる。互いに相手陣内でのミスから決定機をつくった後は、山形県リーグの成績では7位の羽黒に優る2位の東海大山形が相手陣内に押し込む展開となる。しかし、あと一歩でゴールを奪えず、前半は0-0で終えた。 後半も互いに決定機はあるもののゴールを奪えない展開となったが、東海大山形は後半24分FW成嶋歓大(3年)を投入すると、成嶋を起点として決定機が生まれ、後半32分にはチームの攻撃の核であるMF中村陽紀(3年)、後半36分には成嶋自身がシュートを放つが、あと一歩で決め切れない。 しかし、延長戦突入が濃厚となった後半39分だった。PA外左側で東海大山形がFKのチャンスを得ると、「GKからは難しい位置で、自分が狙っても味方に合わせても良い位置だったので、そのまま入ってくれればと思った」とキッカーのMF寺沼世藍(3年)はニアサイドのスペースへ低い弾道のキックを入れた。これにダイビングヘッドで合わせたのはDF高橋蓮恩(3年)。「スペースに来たボールだったので、誰かが触ればと思い、ニアに入ってファーにそらしました」と語った通り、3人が飛び込んでいて、そのうち高橋に当たったシュートがゴールに突き刺さった。試合終盤の劇的ゴールで東海大山形がついに先制した。 羽黒もアディショナルタイムのラストワンプレーでCKのチャンスからゴール前で混戦となり、最後はFW岡部晟士(3年)がシュート。しかし、無情にも枠の外へ外れて羽黒の選手たちがガックリと崩れ落ちた中、試合終了の笛が鳴り、1-0で東海大山形が勝利した。 東海大山形の五十嵐直史監督は「羽黒さんは試合巧者で4年連続決勝に出ていますし、9回も選手権に出ていて、1回も選手権予選で勝てなかった相手でした」となかなか選手権予選で勝てなかった相手からの勝利に感慨ひとしおだった。セットプレーからの得点だったが、「セットプレーが得意ではないチームでしたが、選手権では大事なポイントになると思い、時間を割いて練習しました」という成果も出た。 そして、今大会を全試合無失点で終えられたのも大きかった。「リーグ戦を含めて失点ゼロで抑える試合がなかなかありませんでした。トーナメントの大会は1点で勝負が決まるので、ゼロで抑えたいと話していて、それを実践できました」と語る五十嵐監督。キャプテンのDF秋葉悠寿(3年)が「この大会は粘り強い戦いをして、後ろがゼロで抑えて勝つことがテーマでした。チーム全員で声をかけて体を張って盛り上げました。自分たちの後ろには70人の部員がいるので、彼らのためにも粘り強く戦おうと思いました」と語った通り、この試合でもセットプレーから混戦になる場面が何度かあったが、そんな時も全員で体を張ってクリアに持ち込み、粘り強い守備を実現できたことが10年ぶりの歓喜につながった。 山形県代表は17年連続初戦敗退が続いている中、五十嵐監督は「相手はプリンスリーグ、プレミアリーグのチームばかりで、われわれは県リーグでレベルの差がありますが、一発勝負なので戦い方を整理して、少しでも粘り強く戦って勝機を見いだしたい」と意気込みを語った。 試合後、選手や監督が頭上に大きな「丸」をつくるポーズが見られ、客席の応援団や保護者も次々とそれに応えて「丸」をつくる場面があった。「昨年からか今年からか、保護者の方が丸のポーズをして、それに応えて選手が丸を出すようになりました。それで東海ファミリーが一丸となるようになりました」と経緯を語る五十嵐監督。最後、選手たちと応援団はみんなで丸ポーズをして、集合写真に収まった。全国でも大きな丸をみんなで掲げるため、東海大山形は全員一丸となって戦う。 (取材・文 小林健志)