【専門医が解説】オーラルフレイルの予防は40歳からのケアにかかっている!
最近「口がよく乾く」「むせることが増えた」…そんなことが気になってきたら要注意。将来、口の機能が低下するオーラルフレイルになるかもしれない。その予防方法について、歯科医で歯学博士、厚生労働省歯科医師臨床研修指導医、東京医科歯科大学非常勤講師を務める、照山裕子さんにお話を伺った。
嚙む力、舌圧、唾液、飲み込む力の4つの低下に要注意!
オーラルフレイルという言葉を知っているだろうか? 英語でオーラルは「口」、フレイルは「虚弱」を意味する。つまり、口の機能が低下している状態のことをいう。 「例えば、食事のときにむせることが多くなった、硬いものが食べにくくなった、滑舌が悪くなった…といったことから口の機能は低下していき、やがて自分の口から飲食ができなくなることがあります。オーラルフレイルを発症している人はそうでない人に比べて、健康寿命が短く、要介護になるリスクが高くなるという調査結果が報告されています」(照山先生) 《あなたは大丈夫? オーラルフレイルチェック!》 日本歯科医師会が発表しているチェックリストだ。思い当たるものの点数を合計しよう。 半年前と比べて、 硬い物が食べにくくなった <はい 2 : いいえ 0> お茶や汁物でむせることがある <はい 2 : いいえ 0> 義歯を入れている <はい 2 : いいえ 0> 口の乾きが気になる <はい 1 : いいえ 0> 半年前に比べて、 外出が少なくなった <はい 1 : いいえ 0> さきイカやたくあんくらいの硬さの食べ物は噛むことができる <はい 0 : いいえ 1> 1日2回以上、歯を磨く <はい 0 : いいえ 1> 1年に1回以上、歯科医に行く <はい 0 : いいえ 1> ≫合計の点数でチェック! 0~2点 オーラルフレイルの危険性は低い 3点 オーラルフレイルの危険性あり 4点 オーラルフレイルの危険性が高い *出典/東京大学高齢社会総合研究機構・田中友規、飯島勝矢 オーラルフレイルは60代後半以降に顕著になるが、実は早い人では40代後半頃から兆候が出てくる。つまり早めの予防が必要。特に気をつけたいのが4つの機能の低下だという。 「食べるという機能はよく餅つきにたとえられます。口の中は臼、歯は杵、嚙む力はつき手の筋力、餅を返す人は舌、打ち水は唾液になぞらえます。もちろん杵である歯が健康であることは欠かせませんが、ほかの力も加わらないと餅にはなりません。また、でき上がった餅を飲み込む力も必要です。 これらを考えると、嚙む力、舌圧、唾液量、飲み込む力の4つがそろっていることが、健康に食べるという機能を果たす条件になります」 【1】嚙む力(咀嚼力/そしゃくりょく) 咀嚼は歯、あご、口のまわりの筋肉の連携プレーで行われる。その力が落ちる原因は、杵である歯が痛む、揺れる、あるいは欠損すること。それに付随して食べ物を嚙み砕く筋肉が弱ることが挙げられる。どれかひとつ欠けても、しっかり餅をつくことができない。 【2】舌圧 舌は味覚を感じる器官でもあるが、嚙んだ食品をまとめて塊にし、飲み込むのにも欠かせない。巧みに餅を返す人がいるからこそ、まんべんなく餅をつくことができるのだ。舌も筋肉なので、年齢とともにその力は低下する。 【3】唾液 唾液はおもに口のまわりにある3つの唾液腺から分泌される。1日の平均の唾液量は1.5mlだが、年齢とともに減っていく。唾液量が減ると、なめらかな餅にならない。また、スムーズに物を飲み込みにくくなる。唾液には消化を助ける働きに加え、自浄作用もあり、虫歯や歯周病の予防など口腔内の健康維持にもひと役買っている。 【4】飲み込む力(嚥下/えんげ) 食べ物や飲み物を食道に送る嚥下という作業には、喉まわりの筋肉が使われる。この筋肉が衰えると、食道にきちんと送れず、気管に入って誤嚥を起こしやすくなる。これが誤嚥性肺炎の大きな原因だ。