ここ30年で最も劇的な進化を遂げたロングセラー車 ロイヤルエンフィールド「ブリット350」とは
中でも最も注目するべき要素は、振動を緩和する機構としてエンジンのクランクケース内に1軸バランサーを新設したことでしょう。 さらに言うなら、動弁系をOHVからOHCへ、ボア×ストロークを70×90mmから72×85.8mmへ、1次減速をチェーンからギア式に変更したことなども、同社の新世代空油冷単気筒を語るうえでは欠かせない要素です。 また、フレームは基本的に伝統のダイヤモンドタイプを継承しているのですが、下部には剛性向上に寄与しそうなボルトオン式のダウンチューブを追加しています。
開発陣が、勘所をしっかり理解している
やっぱりロイヤルエンフィールドは、伝統の排気量350ccクラスの単気筒エンジンの勘所をしっかり理解しているんだな……あら、何だか上から目線な発言になってしまいましたが、新世代の「ブリット350」をいろいろな場面で走らせた私は、しみじみそう思いました。
と言うのも近年のロイヤルエンフィールドのニューモデルからは、見方によっては日欧米の主要メーカーを凌駕しているんじゃないか……? と言いたくなる想像力と技術力が感じられるので、もし伝統に興味がないエンジニアが設計を担当していたら、運動性や快適性や利便性が向上していようとも、旧車感が希薄な乗り味になっていたのではないかと思います。 でも新型では、エンジンの発生する振動が非常に少なく(皆無ではない)、車体がどんな場面でもしっかりしていて、サスペンションがよく動き、ブレーキがよく利くのですが、ロングストローク+重くて大きいフライホイールならではの鼓動感、穏やかで優しくて思わずホッとするハンドリングは相変わらずなのです。もちろん、昔ながらのスタイルにも変わりはありません。 ちなみに、メーカーからの公式なアナウンスはないのですが、2023年に試乗した「クラシック350」と比較すると、新型「ブリット350」のエンジンは重厚さがやや増しているように思えました。 また、805mmのシート高は両車共通ですが、シート形状が異なるためか(クラシック350はセパレート式)、あるいは前後サスペンションの設定が異なるのか、車体の動きは「ブリット350」の方が軽快な印象でした。
そんな2024年型「ブリット350」の価格(消費税10%込み)は、シックな佇まいのブラックゴールドが70万1800円、メッキ/バフ仕上げのパーツを多用するスタンダードマルーンとスタンダードブラックが69万4100円です。 市場でライバルとなるネオクラシック系の単気筒車、ホンダ「GB350」(スタンダード:56万1000円、S:60万5000円、C:66万8000円)や、ベネリ「インペリアーレ400」(66万8000円)の価格を考えるとなかなか強気な設定ですが、裏を返せばその事実は、ロイヤルエンフィールド本社と輸入元の自信の表れと言えるのかもしれません。
中村友彦