衝撃TKOでV11成功の内山が来春米国進出へ
プロボクシングのダブル世界タイトル戦が大晦日、大田区総合体育館で行われWBA世界スーパーフェザー級スーパー王者、内山高志(36、ワタナベ)が同級6位オリバー・フローレス(24、ニカラグア)を左のボディブロー一発で、3R1分47秒にTKOで下し11度目の防衛に成功。WBA世界ライトフライ王者の田口良一(29、ワタナベ)も同級7位のルイス・デラローサ(30、コロンビア)が9回終了後に棄権。TKO勝ちで2度目の防衛を果たした。もう敵のいなくなった内山が次に狙うは、米国ラスベガスのリング。早ければ来春にも元WBA世界ファザー級スーパー王者のニコラス・ウォーターズ(29、ジャマイカ)とのビッグマッチが組まれる可能性が出てきた。
祝福に訪れた品川区長が苦笑いで言った。 「素人にはいったい何が当たって何が起きたかわかりませんでした」 3ラウンド。電光石火の左のボディブロー。 「腹が空いてるのが見えたので打った。拳が埋まっていく感じがした。そこまで上を打っていたので、そろそろ下がいけるかなと」 悶絶。うつぶせになった挑戦者は、しばらくピクリとも動かない。ようやく半身になって起き上がったが、一人で立って歩けなかった。 まさに瞬きをしている間の一瞬の出来事で、挑戦者が倒れているのだがから、品川区長が「何が起きたかわからなかった」と言うのも無理はない。 「左フックが的確にレバーに入って立ち上がれなかった。クリーンで強いパンチを右目下にももらい、出入りもされた。私の夜ではなかった」 わずか7分47秒の闘いで日本旅行を終えたフローレスの右目の下と左目のおでこ付近は真っ赤に変色していた。 今年5月に左肘の遊離軟骨の除去手術。これまで悩まされていた肘の痛みからやっと解放された。右拳痛に左肘……。これまで万全な体調でリングに上がれたことはほとんどなかった。右を使えないときもあったし、左肘に異常を感じて、わずか1ラウンドでスパーを切り上げたこともある。試合直前には、必ず痛め止め注射を拳に打たねばリングに上がれなかった。 ストイックな内山にすれば練習で100パーセントできないことが不満でしょうがなかった。そもそも、土居進フィジカルトレーナーの地獄トレーニングの門をくぐった理由も、自分を追い込む場所が欲しかったため。そんなミスターストイックが、今回、初めて練習から100パーセントの力で打ち込めたのだ。 「いつも練習でフルパワーでできずに8割では、試合で100パーセントを出すのは難しかった。やり切った感がない。練習で100出せるならもう少し動けます。そこが楽しみだった」 肘の痛みのなくなった左ボディで、挑戦者が立ち上がれないほどのダメージを与えたのも、内山にすれば100パーセントの練習の成果だったのだろう。1、2ラウンドも、右が、いつもよりも多く出た。サウスポーのフローレスを定石の左でなく、右でコントロールしていた。