おぎぬまXの『キン肉マン』ミステリコラボ第2弾『悪魔超人熱海旅行殺人事件』発売!「前作のトリックを見事に破ってくれた方々へのリベンジマッチを果たしたい」
――おぎぬま先生がかなりディープな『キン肉マン』ファンであることはもはや周知の事実ですが、好きな作品のキャラクターに自分の作ったセリフをしゃべらせる難しさがある、ということでしょうか? おぎ まさにそこなんですよ。大好きだからこそいい加減なこと、失礼なことはできませんし、ファンの人たちが共有しているキャラクター像を壊しちゃいけないのも重々承知してますので、緊張感を持って取り組ませてもらってます。でもその中にあって、読者のみんなが慣れすぎて忘れかけてるキャラクターの良さもあると思ってて、そういうところはあらためて掘り返していきたいとも思ってます。 たとえばサンシャインですが、今となっては人のよさが隠し切れず、なんなら優しくて気のいいおじさんみたいに認識し始めてるファンの人も多いと思うんです。でも、そもそも彼は悪魔六騎士の首領格でものすごい怖さのある超人なのも間違いないと思うんですよ。そういうところを再確認してもらうために掘り下げて、意外性を出していく、みたいな作業ができるのはファンとしても作家としても楽しいですね。 ――前作との違いでひとつ目を引くのは、各短篇の冒頭や合間に、事件の状況をより具体的に整理、考察できる図解がところどころ挿入されている点です。これは意図的にそういう要素を加えられたんしょうか? おぎ はい、これは前作の反省からですね。『四次元殺法殺人事件』の発売後にSNSなどの反応を見させてもらっていたんですが、当初の僕はそれを見るのが怖かったんです。「こんななんでもありなの解けるわけないだろ!」みたいな罵詈雑言ばかりだったらどうしようって。 でもふたを開けてみたら『キン肉マン』ファンの方々は侮(あなど)れなくて、一見なんでもありに見えるその状況を受け入れてくれた上で、なおかつ悔しいというのも変なんですけど、「これは解けた!」って真正面からミステリ攻略に挑んで完全突破してくれた方が少なからずいらっしゃったんです。 そもそも前回は、ミステリに全く馴染みのない人でも楽しんでもらえるように......とトリックや話の構造をシンプルにするように気をつけていました。 なので、読者の方々が「物足りん!」「もっと歯ごたえのある謎をくれ!」と望んでくれるのならば、こちらも全力で応えたいじゃないですか。じゃあ今回は、もう少しレベルを上げさせてもらいますよ!と、間取り図なども自分でつくりました。 ――今度は簡単に解かせないぞ、と? おぎ もちろん、それもありますが、きちんとフェアな謎解きができるように意識しました。僕の中で本当に驚きだったのは『キン肉マン』ファンの裾野はものすごく広くて、ミステリ慣れした読者が想像以上にたくさんいらっしゃったことです。 それは前作を出せたからこそ得られた知見でしたので、じゃあ前作で真正面から僕の用意したトリックと闘って見事に破ってくれた、そういう方々へのリベンジマッチを今回は果たしたい、という気持ちが強くあります。 ――そうなると前作『四次元殺法殺人事件』は初級編、今作『悪魔超人熱海旅行殺人事件』は中級編、といった見方もできるということでしょうか? おぎ 確かにそういう捉え方はできるかもしれません。今作の謎を解けた人が多かった場合は、上級編の『パーフェクト・ザ・ルーム(完璧なる密室殺人)』を引っさげて、再々リベンジをさせていただきます(笑)。