おぎぬまXの『キン肉マン』ミステリコラボ第2弾『悪魔超人熱海旅行殺人事件』発売!「前作のトリックを見事に破ってくれた方々へのリベンジマッチを果たしたい」
――ところで登場超人の人選、キャッチーさというところで考えると単純に人気の度合いが大きいと思うんですが、それとは別の話として、ミステリ向きの超人、不向きな超人というのもありそうですよね? おぎ そうですね。前回の『四次元殺法殺人事件』でのブラックホールなんて特にそうでしたけど、基本的には能力の多彩な超人ほど、無限にその力の活用方法がありそうなのでトリックはどんどん思いつくし、発想していく段階ではめちゃくちゃ楽しいんですよ。でもそれをちゃんと着地させないといけない。 なんでもありだからで終えてしまうと、それはもはやミステリじゃないので、そこに納得のいく道筋をつけないといけなくて、最終的にはそこのバランスが取れるかどうかですよね。とんでもトリックでは確かにあるけど、なんでもありじゃなかった、という読後感を読者に持っていただけるかどうか。奇想を提示できただけで満足することなく、それを着地させていく理屈を煮詰めていく作業が一番、大事なところでもあると思ってやってます。 ――そこである程度、トリックとして成立させていく目途がついたら、あとはその超人をお話の中でキャラクターとして動かしていく、という流れになっていくわけですね。 おぎ はい。でもそこにも新たなハードルがありまして、僕は『キン肉マン』の小説を書くにあたって、登場する超人ひとりひとりに出演交渉をさせてもらってます。 ――出演交渉......とは? おぎ たとえば今回、「レオパルドンは三度死ぬ」という篇の中で、超人血盟軍の皆さんに出ていただくことになったんですが、その時に僕が一番、ビビッてた相手がアシュラマンでした。もちろんものすごく魅力的な超人で、だからこそ、なんとしても出てほしいと考えたんですけど、果たして彼が僕ごときの交渉に応じてくれるのか、三日三晩悩みました。。だってヘタしたら「私にこんなセリフを言わせるつもりか?」って激怒されて、そのまま阿修羅(アシュラ)バスターかけられそうじゃないですか。 ――まあ、やりかねないですよね。 おぎ それが怖くて、僕もつい優しそうな超人にいきがちになるんですよ。たとえば今回だと「激辛超人王殺人事件」という篇に出ていただいたスカイマンとかは、交渉したら即OKみたいな感じで穏やかにすんなり進みました。役者で例えるなら、彼は僕がどんなにムチャな注文をしても、望んだ通りの演技をしてくれて、ものすごくやりやすかったです。 だからと言って、そういう超人たちばかり出すわけにはいきません。たとえ気難しそうでもアシュラマンのような人気超人にはぜひ出ていただきたい! 繰り返しますが、これは僕の頭の中の話ですが......。まずは超人血盟軍の中でブロッケンJr.に交渉に行くんです。そうしたら彼はノリノリでOKしてくれまして。 そこから彼に腕を引っ張ってもらって、ニンジャとかアシュラマンにもなんとかOKをもらえたという感覚です。そこまでお膳立てができてようやく、思いついたストーリーを彼らのセリフとして書き始めることができるという段取りです。ほかの人が聞いたら、なんでそんな面倒なことしてんの?って思われそうなんですけど、大好きな作品のノベライズを書くということは、それくらいの覚悟が必要だと思っています!