タペストリー のカプリHD買収に米国FTCが異議。ラグジュアリー市場の競争と消費者保護を強調
EUは買収を承認
法律専門家のあいだでは、FTCの提訴はその異例さゆえに驚かれており、法的根拠が不確かな可能性が指摘されている。 アンブローズ・ヒルズ・ラザロウ法律事務所(Ambrose, Hills & Lazarow)の設立パートナーで企業弁護士であるジョナサン・ラザロウ氏は、「世界最大のラグジュアリー小売業者であり、実際に市場の主要部分を支配して価格を決定することができるLVMHやケリング(Kering)に対して、米国政府はこれまで一度も行動を起こしたことはない」と語った。 LVMHやケリングといったヨーロッパのラグジュアリーコングロマリットは、タペストリーのこの買収が阻止された場合、ラグジュアリー業界においてより優位な存在として成長することが許されている。ポートフォリオに約75のラグジュアリーブランドを抱えるLVMHは、年間900億ドル(約14兆円)以上を売り上げている。これに対しタペストリーの売上は70億ドル(約1兆円)未満であり、もし買収が成立したとしてもタペストリーが所有する主要なラグジュアリーブランドはわずか7つだ。 この買収が承認されれば、タペストリーはLVMHやリシュモン(Richemont)のようなコングロマリットに匹敵する米国企業となる。EUを含むほかの規制当局はすでにこの買収を承認しており、FTCが最後の関門となっている。ラザロウ氏は、今回の決定により米国のラグジュアリーブランドは厳しい監視下に置かれ、ひいてはブランドの戦略的決定に影響を与える前例となる可能性があるだろうと話す。 「大企業は自社が市場を開拓したりシフトしたりすることを、FTCが懸念しているかどうかを考慮しなければならない」とラザロウ氏は言う。「特定の業界においてはこのような問題が発生する可能性がある。たとえば、あるラグジュアリーブランドがより大規模なコングロマリットや戦略的企業に売却したいと考えている場合、自社がFTCの判断において転機になるかどうかを考えなければならなくなっている」。