日本は「デジタル円」を導入するのか? 世界で実証実験が進む「デジタル通貨」のメリット・問題点を専門家が解説
モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。2月1日(木)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「政府と日銀『デジタル円』の課題整理で初会合」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
◆「デジタル通貨」とは?
お札や硬貨と同じように使える「デジタル通貨」(※現金通貨(紙幣・貨幣)を受け渡すことなく、通信で完結する決済手段の総称)。政府と日銀は、デジタル通貨の今後の論点を議論する初めての会合を1月26日(金)に開き、法律上の課題などを関係機関ごとに整理する方針を確認しました。 吉田:そこで今回は、電子データ形式の法定通貨「デジタル円」について塚越さんに解説いただきます。 ユージ:まず、デジタル通貨について改めて教えていただけますか? 塚越:日本では日本銀行が銀行券=つまり紙幣や貨幣といった現金を発行しているのですが、これは誰でも365日24時間使えますよね。簡単にいえば、これをデジタル化してスマホアプリやカード決済に使えるようにするのが「デジタル通貨」。現金と同じように幅広く使えるものです。 デジタル通貨というと「仮想通貨」を思い浮かべる人もいると思いますが、デジタル通貨は日本銀行の債務として発行される「法定通貨」になるので、仮想通貨とは基本的には異なります。 ちなみに、QRコード決済や交通系のタッチ決済もありますよね。あれは法定通貨を基準とした前払いシステムになっていて、「電子マネー」と言われることもあります。
◆世界で進む「デジタル通貨」の実証実験 すでに導入している国も
吉田:今回、デジタル円の初会合で、どのような話があったのでしょうか? 塚越:アメリカやEU、中国ではすでにデジタル通貨の議論が進んでいるので、日本でも考えようということです。 まず前提として、政府と日銀はデジタル通貨を「現時点では発行する計画はない」と話しています。しかし会合には財務省や内閣府、警察庁の幹部らが出席のほか、公正取引委員会や個人情報保護委員会からもオブザーバー参加があり注目されています。 会合では、財務省や日銀がこれまで有識者会議で議論した内容を報告して、導入の場合の法整備などの課題について話し合い、今春を目処に検討結果をまとめることを確認することになっていました。今後も連絡会議を重ねて議論していこうということになっています。 ユージ:ちなみに、世界でのデジタル通貨の動きはいかがでしょうか? 塚越:早いところでは2020年10月、中米のバハマ、あるいはカンボジアが実証実験を終えて正式にデジタル通貨を発行し、運用がスタートしています。 G7では、アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)、イギリスのイングランド銀行、カナダ銀行などは慎重姿勢です。アメリカのバイデン大統領は積極的な姿勢を見せていて、11月の大統領選の対抗馬とみられるトランプ氏は否定的な姿勢ということで、ここも論点になってくると思います。 一方、積極的な姿勢を見せているのが中国で、「デジタル人民元」の実証実験を続けています。また欧州でも、ユーロ圏の中央銀行である「欧州中央銀行」が、2028年頃の発行を目指しており、すでに去年の6月に「デジタルユーロ」に関する法案をまとめています。