「自分を変えるきっかけに」地域活性化に取り組む高知の高校生たちに迫る
高知県中西部の自然豊かな佐川町。日本の植物学の父と呼ばれた牧野富太郎博士の出身地でもある。そんな地域に唯一ある公立高校である高知県立佐川高等学校には、地域マネジメント部という部活動がある。 ガイド中の一場面 全校生徒約100名のうち3分の1が所属し、高校生たちが積極的に地域に出てまちづくりに関わっている。地域にとって欠かせない存在となっている高校生たちの活動に迫るべく、部長である3年生の岡村優美香さんと、2年生の田村美結さん、藤原愛結さん、片岡花音さんから話を伺った。
高校生による町歩きガイド
地域マネジメント部の活動は多岐にわたるが、その中でも代表的なのが高校生による町歩きガイドである。主に佐川町の城下町から牧野公園まで2時間半の行程だ。観光客などから定期的に依頼があり、多いときには50名ほどの参加者を、生徒約10人のチームでアテンド係や各スポットでの説明係などを役割分担して実施している。外国人向けに英語でガイドすることもある。ここのところは、NHKの連続テレビ小説で佐川町が取り上げられたこともあり、依頼も増えているという。 「1年生の頃は台本を覚えて話すだけで必死ですが、慣れてくるとお客さんからの深い質問にもアドリブで対応できるようになります。今では、自分の言葉で説明したり、お客さんに積極的に話しかけたりできるようになりました。お客さんに楽しんでもらえたり、笑ってもらえたりするとやりがいを感じます。(田村さん)」 他に、地域の特産品であるフルーツトマトという甘いトマトを地元の農家と協力し、育てて販売をしている。近隣の道の駅や役場、イベント会場などで高校生自ら販売する。時には、北海道や東京、群馬に沖縄まで、出張販売に行くこともあるという。 「販売は簡単ではありません。試食を勧めたり、お客さんにこちらから話しかけたりして一生懸命販売しています。大変ですが、佐川町の宣伝になればとの思いで、高知県から来ました!とアピールして販売しています。佐川町のことを紹介するパネルも設置して、地元のことを多くの人々に知ってもらうよう取り組んでいます。(藤原さん)」 他にも地元企業と協力してスイーツなどの商品開発の実施や、地域の空き店舗を活用した高校生カフェ、近隣の中学校へ高校生が行う学校説明会に「商い甲子園」などのコンテストへの出場や、牧野富太郎生誕祭といったの地域のお祭りへの参加など、地域の人々からの様々な誘いに対して、関心のある部員たちがチームを作って関わっている。地域の賑わいの中心には、いつも佐川高校の生徒たちがいる、そんな町の風景が生まれている。 ここまで積極的に活動している生徒たちだが、もともとアクティブな生徒ばかりだったというわけではないという。 「人前で話すことや自分から話しかけることが苦手だったので変えていきたいと思って入りました。ガイドのときに、困っているお客さんに自然と話しかけている自分に気づいたとき、自分は変わったんだと思いました。(片岡さん)」 「もともと帰宅部でいいかなって思っていましたが、友達に誘われて軽い気持ちで入りました。活動はとても忙しく、準備も大変ではじめは辞めたいと思いました。でも、入ったからにはちゃんとやりきろうと思って続けているうちに、人と関わる楽しさを知り、人見知りだった自分も変わりました。英語のガイドは特に達成感があり、苦手な英語が伝わった瞬間は印象的でした。何事もやればなんとかなるかもと自信がつきました。(岡村さん)」 多くの生徒たちが、地域活動を通して自分自身が変わるきっかけになっていることは印象的だった。どこにでもいる普通の高校生たちが、仲間や地域の中で成長する。 「イベントなど、私たちができることがあればぜひ呼んでほしいと思います。活動を通して人との繋がりが広がっていくことが本当に楽しく感じています。(岡村さん)」 10月には仁淀ブルー観光協会との企画で、一般参加が可能な高校生町歩きガイドも予定されている。小さな町での高校生の取り組みだが、その活動の意義は極めて大きいものだと感じた。地域マネジメント部のこれからの活躍にも目が離せない。
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