英語が小5から正式教科に(3)なぜ教科書づくりがフライングで進行するのか
2020年度から、小学校の5・6年生は、英語が算数や国語と同じ「教科」になる。これまで、「教科書」はなく、文部科学省が作った外国語活動教材「Hi,friends!」が使われていたり、独自の指導が行われていたりした。2020年度に向けて、教科書会社は国の検定を受けた教科書を作らなければならないが、教科書会社からは「準備期間が足りない」との声も聞かれる。その理由とは。
検定教科書が学校で使われるまでには4年かかる
本来、検定教科書が学校で使われるまでには4年かかる。1~2年かけ、教科書の内容を企画し、著者に原稿執筆を依頼。資料などを集めて検定に出す申請本を作る。3年目に文科省の検定を受け、4年目に教育委員会などが複数の教科書を比べて地域で使う教科書を決定する流れだ。ただ、今回、初めて教科になる小学校の英語については2017年度の1年間しか編集の時間が取れない。小学校英語の検定教科書を作ろうと思っている教科書会社は水面下ですでに動きを始めるしかない。 都内に本社がある教科書会社の編集担当者は「新しい学習指導要領ができるまで待っていては間に合わない」とし、小学校の教員を対象とした指導法の講座などに参加し、現場のニーズがどこにあるのか探っている。「まだ内容はほとんど決まっていないが、中学や高校の教材とは違い【英語を楽しむ】というスタンスはキーワードになりそうだ。求められているものもドリルとかではなく、活動やゲームなどを交えた中で色々な単語などを学べるものが良いのでは」などと話す。 別の教科書会社の担当者も「これまで新しく教科ができるときは、編集期間は2年ぐらいあった。小学校英語は異例の短さ」と焦りを見せる。すでに目ぼしい人には執筆を依頼するなど、フライング気味に動いている。「文科省の研究指定校の授業を見学するなどなるべく情報を集めて、新学習指導要領の内容を予測するしかない。 今のところ知識としてこれを覚えてと求める必要はないとよんでおり、現在の教材に単語や文字の表記が増えるイメージを持っている」などと説明した。ただ、あまり今の「外国語活動」の教材と代わり映えしなければ、教科化の意味がなくなる。「教科書にどの程度勉強の要素を取り入れるかのさじ加減が難しい」と話す。
2018年実施の先行授業では検定教科書が間に合わない
2018年度には一部の小学校で新学習指導要領に基づいた授業が先行実施される。その際には検定教科書が間に合わないため、文科省は来年度1年間で新たな教材の開発も行う予定でいる。一部の小学校では、2018年度には検定教科書とは違う教材を使い、2年間授業を受けることになりそうだ。 文科省は昨年度に約2200校に教科化に向け独自に作った補助教材「Hi, friends! Plus」を配布。試行的に活用しながら効果を検証している。教科書会社の編集担当者は「少しでも情報が欲しいので新しい教材をなるべく早く作ってほしい」などと話している。