【独自】日本の最先端電池技術が中国に流出の危機…!?「経済安全保障」のウラでひそかに広がるヤバすぎる落とし穴
「経済安全保障」というが…
こうした一連の「活動」により、堀江氏はすっかりトリプルワンを信用してしまった。 そして2023年3月、トリプルワンはAPBに「福井の工場を視察させてほしい」と申し入れる。このときトリプルワンは三洋化成から36%のAPB株を取得した「筆頭株主」。その依頼であれば、堀江氏は応じざるを得ない。 ところがトリプルワンが福井の工場視察に連れてきた4人の名刺を見て、堀江氏は愕然とする。2人は華為技術日本の副社長と本部長、あとの2人は中国深センの本社からきた技術者だったのだ。「華為」とはもちろん、中国の通信機器大手・ファーウェイのことである。 「中国企業の幹部がついてくることなど知らされておらず、驚いた堀江氏は、ある調査会社にトリプルワンの実態調査を依頼しました。すると山口氏と大島氏は頻繁に深センを訪れていることが分かったというのです。 さらにトリプルワンはAPBに対し、中国で全個体電池を開発している『アンパワー』という会社との協業を勧めてきたといいます。『アンパワーの全個体電池をAPBの福井工場で生産し米欧に輸出しないか』と堀江氏に提案したと聞きます」(同前) 中国系企業との結びつきがあることがすべて問題だというわけではない。しかし、APBは川崎重工業と次世代潜水艦向け蓄電池の開発を進めている。食べ物やサービス、娯楽を提供している企業とは意味が違う。全樹脂電池の技術がどんな形であれ中国に漏れれば、安全保障上、重大な問題が発生する恐れがある。 「経済安全保障」を重視するアメリカは同盟国に、こうした最先端技術を厳重に管理するよう求めており、万一にも実際にAPBの技術が流出するようなことがあれば、米国の輸出入規制に抵触する可能性もある。 6月24日現在、トリプルワンと5つの会社は「堀江解任」で足並みを揃えており、6月28日のAPB株主総会では堀江氏の取締役選任に反対する構えだという話も聞こえてくる。創業者である堀江氏が解任されれば、APBの持つ全樹脂電池の技術が中国に吸い取られる可能性もあるかもしれない。これらの懸念が浮上していることについて、トリプルワンは丁寧に説明する必要があるだろう。 (三洋化成工業は「堀江社長に辞任を求めているのは事実か」との質問に対して「辞任を求めている事実はございません」と回答。APB株をトリプルワンに譲渡した経緯については「APB堀江様からのご紹介により存じ上げるに至りました。APB社の技術開発を加速させ、将来的な事業成長に資することなどから売却を行ったものです」と回答。また、中国企業との関係については「承知しておりません」とのことだった。 トリプルワンからは、回答は控える旨の連絡があった。) 経産省は「経済安全保障」の名の下、半導体産業に何兆円もの補助金をばら撒いている。もしも足元の技術漏洩さえ止められないようなら、看板に偽りあり、と言わざるを得ない。
大西 康之(ジャーナリスト)