【独自】日本の最先端電池技術が中国に流出の危機…!?「経済安全保障」のウラでひそかに広がるヤバすぎる落とし穴
態度一変
量産を目指す堀江氏は、素材の研究パートナーに、高分子吸収体の開発で実績のある三洋化成工業を選び、同社の出資を仰ぐ。 工場建設のため巨額の資金を必要とした堀江氏は、このほかJFEケミカル、横河電機、大林組、長瀬産業、豊田通商など13社から88億円を調達した。優良企業が軒並み出資したことからもこの会社の将来性は明らかだが、SPAC(特別買収目的会社)を使った上場計画も持ち上がり、その企業価値は2600億円から4300億円とされた。 出資企業の中では三洋化成がリーダー格で、JFEケミカル、横河電機、大林組、長瀬産業を含む「5社会」がAPBの経営に積極的に参加する姿勢を見せ、しばらくは蜜月が続いた。 ところが、である。 堀江氏に惚れ込んでいた三洋化成の安藤孝夫社長が失脚し、2021年に現在の樋口章憲社長に交代すると、三洋化成が態度を一変させた、というのだ。 「5社会の中で樋口社長は『堀江氏は経営者の資質に欠ける』と主張し、堀江氏を追い出しにかかったというのです。その後、堀江氏が地位保全を求める訴えを起こし、2022年に二度の裁判で勝訴しました。すると、樋口社長は今度は自社が保有するAPB株の大半を売却すると言い出したのです」(三洋化成関係者) ここでAPB株の引き受け手として登場するのが、福岡市に本社を置く資本金39億円の「TRIPLE-1(トリプルワン)」という会社である。社長は山口拓也という人物だが、その経歴はヴェールに包まれている。表に出ているのは三菱商事出身の大島麿礼副社長だ。 ホームページを見ると、トリプルワンはビットコインの採掘のために膨大な計算をするデータセンター向けの超高性能半導体「KAMIKAZE(カミカゼ)」を開発したと書いてある。 こうした事業内容から同社を「ユニコーン(企業価値1000億円を超える非公開ベンチャー企業)」と称賛するメディアもあったが、事業の実態はよくわからない部分もある。 さて、こうした経緯で堀江氏に接近した山口氏と大島氏は、堀江氏に「全樹脂電池を量産するのにいくらかかるか」と尋ねたという。堀江氏が「40億円は必要」と答えると、 「自分たちはサウジアラビアの皇族にコネクションがある実業家のオマール・カンディール氏や、国際協力銀行会長の前田匡史氏と繋がりがあるので、100億円くらいはすぐに調達できる」 と請け合ったという。 カンディール氏は日本の政界にも顔が利く人物。安倍晋三氏の首相秘書官だった経産省出身の今井尚哉氏らと昵懇で、1990年代には東芝によるウエスチングハウス社買収などにも深く関与した。東芝は海外原発事業の失敗から粉飾決算に走り、ついに上場廃止になったが、カンディール氏は今も経産省に顔が効くという。 そのカンディール氏は2022年12月に岸田文雄首相がサウジを訪問した際、随行企業の中にAPBを加え、堀江氏をサウジのPIFやUAEのADQ(いずれも、巨額の資産を持つ各国の政府系投資ファンド)に連れて行った。