「毒」が裏返る”逆転の発想”!…「有害」なステータスが「最良」のシグナルになる衝撃の理由とは
学術論文が「複雑な専門用語」で書かれる理由
学術論文が、専門家にしかわからない専門用語で書かれる理由も、同じように説明できる。学者は、もっと簡単でわかりやすく書けるはずなのに、なぜゴチャゴチャとわかりにくい書き方をするのだろうか?そして何より、たいした内容はないのに、長々と理解不能な文体を使っているというだけの理由で、知識人が高く評価されるのはどうしてだろうか? もとはと言えば、堅苦しい学術用語をつくるほうが、日常的な言葉遣いに含まれる余分な意味などを排除して、純粋に科学的で正確な説明ができるので好都合だった。そのため、人工的で難解な言葉が真剣に学問を行う知識人を示すシグナルとなった。 しかしその後、そこに潜む学術的な背景を理解せずに「複雑な専門用語」だけを模倣する者が出てきた。ニセ髭が現れたのである。 この点こそが、道徳の進化における根本的な問題だと言える。協力関係を成立させる方法が見つかったと思っても、その方法もまた、偶然の突然変異によって生じる非協力戦略の影響を排除できずに損なわれてしまい、結局また一からのやり直しになる。 『人間の社会性は明らかに「不自然」…人間だけが何万年間も大規模な“協調関係”を形成できた「衝撃のワケ」』へ続く
ハンノ・ザウアー、長谷川 圭