【サッカー日本代表 板倉滉の「やるよ、俺は!」】第13回「すべてを受け入れ、前へ!」
■"戦犯"からのリスタート ボルシアMGに戻ってから、セオアネ監督は何度もふたりで話す機会をつくってくれた。アジア杯の試合もすべてチェックしてくれていたようで、メンタル面も含めて、非常に心配してくれているのがよくわかった。 チームメイトたちが花道をつくって出迎えてくれたサプライズ演出も、監督主導によるものだったと後で聞かされた。素直にうれしかった。 「コウ、チームにはおまえが必要だ。準備はできているか?」 監督からかけられた言葉が胸に刺さった。 2月10日、ブンデスリーガ第21節ダルムシュタット戦。ケガで離脱していたこともあり、ボルシアMGでの実戦は4ヵ月ぶりだった。 正直な話、試合に入る前はいつもより不安感があった。ケガ明けというせいではなく、深く引きずっていたわけではないが、やはりイラン戦のすぐ後だったこともあり、"あのシーン"が脳裏にちらついた。 今まであまり経験したことのない感情だった。 本拠地ボルシア・パルクのトンネルを抜けると、ずっしりと響くサポーターのチャントと、発煙筒から発される緑色の煙に包まれる。やはり、ホームはいいものだ。 「ここからがリスタートだ」 何度も自分にそう言い聞かせて試合に臨んだ。開始3分、一発目のスライディングブロック。雑念は消え、いい入り方ができたと手応えを感じた。その後もデュエルや空中戦、味方へのパスはほぼうまくいった。 結果こそ、0-0の引き分けに終わってしまったが、自分の中で得られたものは大きい。久々に気持ちよくサッカーができたという実感があった。 アジア杯を経て、メンタル面の切り替えの難しさに直面したが、意固地にならず、素直に声援も批判も自分の実力不足も受け入れ、考えすぎないシンプルマインドが大事だと、あらためてわかった。 決して後ろ向きにならないこと。前進なくして、次のステージはない。やるよ、俺は。さらに進化してみせる。 構成・文/高橋史門 撮影/山上徳幸 写真/アフロ