【大学トレンド】資格取得したら学生に奨励金 公認会計士30万円、国家公務員総合職20万円…
外部講師を招いて対策講座も
この制度の特徴は、資格取得に向けた大学内での手厚いサポート体制が整えられていることです。通常の学部での授業に加え、外部の講師を招いたさまざまな資格対策講座を開講しています。 例えば、宅建ならば約半年間、週3回の講座があり、受講料は9万円(対面講座の場合)。行政書士対策講座や、地方公務員や国家公務員を目指す講座については、大手予備校の半分以下の費用で受講でき、「グループでの学び合いや教え合いを通じて、学びを深めることができます」と就職・キャリア支援課の中西宏課長は話します。 資格取得からは、別の成果も生まれています。大学側が過去の就職活動の実績を検証したところ、資格対策講座を受講した学生や、実際に資格を取得した学生のほうが、大学全体の平均に比べて、就職率や希望の進路に進めた割合が高い傾向がありました。 「特定の資格を持っているだけで、企業が採用してくれるわけではありません。それよりも、資格試験の準備を通して勉強の習慣が身につくことの効果が大きいと考えています。リスキリングが求められる時代ですから、企業側も学ぶ姿勢を持った社員を求めていますし、面接時に『学生時代に力を入れて取り組んだこと』を聞かれたときなどに、資格の勉強で努力した話は説得力を持ちやすいと感じています」(中西課長)
「毎日勉強する習慣がついた」
地域創造学部4年の村上楓明(ふうめい)さんは、奨励金制度を利用してこれまでに宅建士、行政書士、FP技能検定2級の資格を取得し、今は国家公務員総合職2次試験の合格を目指して勉強を続けています。在学中に数々の資格を取得できたのは、奨励金制度の存在が大きかったと話します。 「入学時に大学のサイトなどで制度の存在を知り、もともと公務員になりたかったので、宅建士の講座を受けてみたのが始まりです。奨励金はあまり意識していませんでしたが、1年秋の合格後に申請して奨励金をもらえたことがうれしくて、ほかの試験にも挑戦するモチベーションにもなりました。奨励金でテキストなども買いそろえることができて、ありがたく思っています」 2年生で行政書士、3年生では国家公務員試験の勉強のかたわら、独学でFP技能検定2級を取得。ほかにも、奨励金の対象ではない賃貸不動産経営管理士や、個人情報保護士、マイナンバー実務検定1級といった公務員の仕事に役立ちそうな資格を次々と取得するなど、勉強に邁進する学生生活を送りました。 「高校時代はそれほど勉強していなかったのですが、資格を取れたことの達成感もあって、だんだん勉強する習慣が身につきました。今では、授業以外に1日5時間以上は勉強しています。同じ資格対策講座をとっている学生とは、学部や学年を超えて仲良くなり、サークル活動のように楽しみながら勉強できました。猛烈に勉強している上級生の雰囲気に刺激されて勉強を頑張り始める下級生もいて、モチベーションを高め合えています」 大学側も、難関資格を取得した学生の名前を学内に貼り出すなど、後に続く学生たちの励みになるような工夫をしてきました。「学内全体の雰囲気が変わってきた」と中西課長は語ります。 「キャンパスのあちこちで、いろいろな参考書を積み上げて勉強している学生の姿が目につくようになってきました。あくまで肌感覚ですが、『みんな勉強しているな。自分も頑張らなければ』という学生の雰囲気がキャンパス全体にあふれてきたように感じています」 資格取得者に奨励金などの金銭的なアドバンテージを与える制度を設けている大学は、ほかにも多くあります。 名古屋経済大学では、宅建士や日商簿記2級などの資格取得者に6万円の奨学金を支給するほか、公認会計士には60万円を支給しています。 千葉商科大学では、同様の「資格等取得奨励金制度」に加えて、「資格取得特待生」として、公認会計士試験や税理士試験に合格すると授業料が1年間全額免除、日商簿記検定1級や中小企業診断士1次試験全科目に合格すると授業料が1年間半額免除となるなどの制度も設けています。23年度は、それらの制度で約750人が奨励金などを獲得しています。なかには「地方公務員を目指して民間の予備校に通うことを考えたものの、金銭的に断念。でも、学内に比較的安い費用で受けられる講座や奨励金のサポートがあることを知って挑戦することにしました」と、約2年間の勉強の末に公務員試験に見事合格し、目標だった地方公務員の内定をつかんだ学生もいるそうです。 資格の勉強を頑張った学生たちは、もらえる奨励金以上の、金銭では測れない内面の「宝物」を手に入れているのかもしれません。
朝日新聞Thinkキャンパス