SNS時代に合わぬ公選法 選挙プランナーへの報酬NG、投稿収益化は「想定外」
11月の兵庫県知事選などを機に、選挙におけるSNS(交流サイト)の影響力が増大している現実と現行法のずれが顕在化した。選挙期間中にSNSで形成された「世論」が結果を左右する一方、選挙プランナーらへの報酬(対価)が原則認められない公職選挙法の規定には疑問の声が上がる。選挙関連の動画投稿などを収益の手段とするような法の「想定外」の動きも無視できない。 【写真】兵庫県内のPR会社経営者が投稿した記事の一部 ■女性コラムで議論に火 兵庫県知事選の後、選挙運動と報酬の問題を巡る議論に火がついた。きっかけは、再選を果たした斎藤元彦知事の陣営に入ったPR会社の女性経営者がインターネット上に投稿したコラムだ。 女性はコラムで、SNSの運用を含む《広報全般を任せていただいた》などと発信。PR会社にはチラシデザインの制作費など計71万5千円が支払われており、主体的・裁量的に広報戦略を企画立案した場合は、選挙運動者への金銭提供などを禁じた公選法の買収罪にあたる可能性がある。 ■「国が公費支援を」 インターネットによる選挙運動が平成25年に解禁されて10年以上がたつ中、現行法で選挙運動の報酬が認められるのは、ウグイス嬢と呼ばれる車上運動員などに限られる。一方で候補者陣営がSNSを含めた選挙戦略を業者に依頼することは珍しくない。 一橋大大学院の只野雅人教授(憲法学)は「コンサルタントなしに選挙は成り立たない。選挙プランナーらへの一定の支出は認め、きちんと選挙運動の収支報告書に記載させるのも一つの手だ」との見解を示す。 情報サイト「選挙ドットコム」を運営する「イチニ」代表取締役の高畑卓(すぐる)氏は「ネットが大きな力を持ち、選挙運動が変わっている中で、法律が時代に合っていない」と指摘。選挙前の政治活動では業者への報酬支払いが認められていることに言及し「現在の規制はバランスを欠いている。アップデートが必要だ」と問題提起する。 総務省によると、ネットを使った選挙運動に対し、国が公費で支援する枠組みはない。高畑氏は「候補者のネットリテラシーに差がある一方、ネットの影響力が増すメディアシフトは止めようがない。国が公費でサポートするほうが候補者や有権者にとって有益だ」と提案した。 ■「発信先鋭化の恐れ」