SNS時代に合わぬ公選法 選挙プランナーへの報酬NG、投稿収益化は「想定外」
動画投稿サイト「ユーチューブ」やX(旧ツイッター)などには、動画再生数や投稿の表示回数に応じた収益配分システムがあり、視聴者数の増加が収益につながる。兵庫県知事選でも、収益目的で斎藤氏を扱う動画や投稿が激増した。
法政大大学院の白鳥浩教授(現代政治分析)は「候補者に関するデジタル発信で経済的利益を得ることは、公選法で想定していない事態だ」と指摘する。
白鳥氏は「注目を集めようと、発信内容は先鋭化する傾向がある」と弊害に言及し、「SNSや動画配信の運営会社などを対象に、選挙期間中の政治コンテンツの収益化を規制するような取り組みが必要だ」と語った。
■慎重要する「規制」
兵庫県知事選の期間中、SNS上では候補者らに関する真偽不明の情報や誹謗(ひぼう)中傷の投稿が拡散し、選挙後に刑事告訴・告発が相次ぐなど禍根を残した。虚偽情報の投稿などにどう対処するかは国会でも議論になっている。
「公職選挙法において虚偽事項公表罪が設けられている。SNSを含めインターネット上の発信なども対象となる」。村上誠一郎総務相は3日の参院代表質問で、こうした見解を示した。
ただ規制のあり方は慎重な検討を要する。石破茂首相は「表現の自由や選挙運動、政治活動の自由に関わる重大な問題」として、各党の議論に委ねる考えを示した。
議論の呼び水となった兵庫県知事選では、斎藤元彦氏と争った元同県尼崎市長、稲村和美氏の陣営が運営するXの公式アカウントが2回凍結。稲村氏の後援会は、何者かによる一斉の虚偽通報で選挙活動を妨害されたとして、偽計業務妨害罪で兵庫県警に告訴した。
斎藤氏のパワハラ疑惑などを調査する県議会調査特別委員会(百条委員会)への誹謗中傷も相次ぎ、委員の一人は議員辞職に追い込まれた。百条委の委員長は、SNS上で虚偽の内容を投稿され名誉を傷つけられたとして、知事選に立候補した「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏を名誉毀損(きそん)罪で告訴した。