世界王者の宇野昌磨ですら「相当緊張した」自己ベスト連発の男子シングル。好演技の相乗効果が生んだ”過去最高レベル”の激闘譜【フィギュア全日本選手権】
鍵山優真が完璧な演技!右手でガッツポーズも
首位に踊り出た佐藤、そして12月のグランプリファイナルで一緒に戦った鍵山優真とジュニア時代から切磋琢磨し続けてきた三浦佳生もライバルの演技に刺激を受けた。 ショートでは体調不良のなか魂の演技を披露したが、終盤の足替えシットスピンがまさかの「0点」にジャッジされ、演技後には「点数に納得いかない」と異論を唱えていた。18歳は、その悔しさをぶつけるかのようにフリーでは『進撃の巨人』を熱演。観衆、そして因縁のジャッジをも十分に唸らせた。 迫力ある滑りで4回転ジャンプを3本着氷させた三浦。特に体力が落ちる後半の4回転+3回転の連続トウループを降りた時には気迫さえ感じ、ジャッジの目の前まで迫るフィニッシュは、まさに巨人を駆逐する調査兵団の決死な姿そのもの。演技後は渾身のガッツポーズが飛び出し、パーソナルベストを確認すると支えてくれた両脇のコーチらと涙の抱擁を交わした。 ショートとは違い、充実した表情で戻ってきた18歳は「内容としては満足しているし、笑顔で大会を終えられて良かった。満足のいく点数。すごくレベルの高い試合だった」と話すが、「でも、表彰台に上がれなかったのは悔しい。いい演技が続いた中、自分も堂々と滑れた」と負けず嫌いな一面も見せたが、周りのスケーターの完璧な演技が自身のパフォーマンスをより引き上げてくれたことを強調し、晴れやかな顔で会場を去った。 軒並みパーソナルベストが連発し、表彰台の行方が目まぐるしく変わる史上空前の事態に会場は異様な雰囲気に包まれた。 残り3人となり、トップに立てば表彰台が確定する重要な場面で登場したのは、今季大躍進を遂げた20歳の鍵山。父でコーチを務める正和氏、そして今季から新コーチに就任した2014年ソチ五輪銅メダリストのカロリーナ・コストナー(イタリア)氏が見守るなか、若武者は今季最高のパフォーマンスを見せる。 冒頭の4回転サルコウを高く鋭い回転で降りると、GOEは驚異の「4.30点」とプラス評価。2つ目に予定した4回転を含んだ3つのコンビネーションを降りると、その後のジャンプはノーミスで終え、曲が大きく盛り上がる後半にはステップシークェンスで思わずつまずく場面も。のちに「ほとんど足に力が入らなかった。うわっ、やってしまった」と一瞬焦ったことを明かしたが、その後は冷静に対応した。 動きが激しくなり、氷上を躍動する鍵山。スピン、ステップでも最高評価のレベル4を獲得する完璧な演技で、最後は両手を天井に向かって突き上げフィニッシュ。スタンディングオベーションに包まれ、すべての力を出し切った20歳は右手で力強くガッツポーズ。喜びを爆発させた。 銅メダルを獲得し、今季ベストだったグランプリファイナルの得点を約10点も上回る198.16点を叩き出し、合計は292.10点。暫定トップに浮上した鍵山が、表彰台を確定させた。隣では父親が涙目になるほど、昨シーズン、怪我の不調を吹き飛ばす見事なパーフェクト演技だった。
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