映像波紋の「フルコンタクト空手」、子どものリスク「親は理解していますか?」 重傷でも賠償認められないことも…弁護士指摘
⚫︎著しいルール違反でも子どもへの賠償請求は必ず認められるわけではない
――フルコンタクト空手に出場させることには、子どもとその保護者に、どのような法的リスクが考えられるでしょうか 子どもがフルコンタクトの試合で対戦相手に傷害を負わせた場合、まず考えられるのが、傷害を負わせた子どもに対する不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求です。 不法行為に該当するというためには、子どもの行為が違法であることが前提となります。 この点について、「一般に、スポーツの競技中に生じた加害行為については、それがそのスポーツのルールに著しく反することがなく、かつ通常予測され許容された動作に起因するものであるときは、そのスポーツの競技に参加した者全員がその危険を予め受忍し加害行為を承諾しているものと解するのが相当であり、このような場合加害者の行為は違法性を阻却するものというべきである」と判示した裁判例(東京地裁昭和45年2月27日判決)があります。 フルコンタクトではケガのリスクは当然ありますし、試合出場にあたって、ケガの危険を予め認識しているといえます。 したがって、ルール違反だとしても「加害行為がそのスポーツのルールに著しく反することがなく、かつ通常予測され許容された動作に起因するものであるとき」には違法性がないものといえるため、不法行為に該当せず、子どもに対する損害賠償請求は認められないということになります。
仮に加害行為がルールに著しく反する行為であり、通常予測され許容された動作に起因するものとはいえない場合には、違法性が認められ、不法行為に該当することになりますが、その場合でも、子どもに対する損害賠償請求が必ず認められるわけではありません。 未成年の加害者に責任能力がないと認められる場合には、損害賠償責任を負わないこととなります(民法712条)。この責任能力については、おおむね11~12歳程度が目安だとされています。 つまり、子どもがフルコンタクトで相手にケガをさせたとしても、子どもに責任能力がないと認められる場合には、子どもに対する損害賠償請求は認められないこととなります。 このような場合には、ケガをさせた子どもの親に対して損害賠償を請求することになります。