この冬、「ショパンの晩年の作品だけを弾く演奏会」に挑む女性ピアニストが初めてたどりついた、ショパンの「過激ですごい世界」
ロシアピアニズムの伝統を引き継ぐ女性ピアニスト、イリーナ・メジューエワがショパンの主要作品を創作時期ごとに紹介するリサイタル・シリーズが、今年の12月に最終回を迎える。 【つづき】「私にとってすごく美しいプログラム」…ショパン晩年の作品を語る理由 最終回のプログラムはショパンの晩年の作品のみで構成されている。晩年の作品を集中して弾くのはイリーナにとって初めてのことであり、「いままで見えなかったショパンの世界が現れてきた」と、イリーナは語る。 『ショパンの名曲 ピアノの名曲 聴きどころ 弾きどころ2』(講談社現代新書)など、ショパンに関する著書もあるイリーナが、プログラムの中から特別な曲を挙げながら、ショパンの晩年の世界の魅力について語る。【前編】 * 【名古屋公演】 イリーナ・メジューエワ ショパンの肖像 ~Portrait of Chopin~(全6回)第6回(最終回):2024年 12/7 (土) 開場13:30 開演14:00 宗次ホール 〈プログラム〉 3つのマズルカ Op.56/バラード第4番 ヘ短調 Op.52/子守歌 変ニ長調 Op.57/舟歌 嬰ヘ長調 Op.60 ……………… ポロネーズ第6番 変イ長調 Op.53 「英雄」/2つのノクターン Op.62/3つのワルツ Op.64/幻想ポロネーズ 変イ長調 Op.61 * 【東京公演】 イリーナ・メジューエワ ピアノリサイタル「ショパンの肖像」(全4回) 第4回(後期):2024年12月22日(日) 開場13:30 開演14:00東京文化会館 小ホール 〈プログラム〉 2つのノクターン Op.55/スケルツォ第4番 ホ長調Op.54 /3つのマズルカOp.56/バラード第4番 ヘ短調Op.52/3つのマズルカOp.59/舟歌 嬰ヘ長調Op.60/3つのワルツOp.64/幻想ポロネーズ 変イ長調Op.61
ショパン晩年の作品を一言でいうと「ポリフォニー」
8月の名古屋での演奏会のときに改めて思ったのですが、ショパンの後期の音楽って現代っぽいんですね。こんなに過激な音楽だったのかと驚きました。 『バラード第4番』にしても『舟歌』にしてもそうですが、今度のプログラムに入っている曲は、これまでもリサイタルではけっこう取り上げていました。しかし晩年の作品だけを集中的に演奏するというリサイタルはやっていない。晩年の世界だけでプログラムを編成してみると、いままで見えなかった世界が現れてきたのです。 一言でいうと「ポリフォニー」。どこがメロディでどこがハーモニーか、あまりにも一緒になっていて分けることができない。混然一体といいますか、すべてが混じり合っていて、会話しながら1つのハーモニーをつくっていく。 しかもその「まとまった1つ」の形が美しい。ビシッと厳しく決まっています。バッハに近い世界です。でも、論理性は厳密だけれど、ハーモニーがショパンらしく歌っている。そして、ポリフォニー的にはとっても複雑だけれど、聴いた印象としてはむしろシンプル。ショパン以外にはあり得ない、それはすごい世界です。