「今からお父さんとお母さんは避難します!」本誌記者の実家がターゲットに…《実録》闇バイト「強盗団」の手口と恐怖
身に覚えのない未払い料金
インターフォンを鳴らすと、憔悴しきった様子の母が出迎えてくれた。 「怖いから夜も電気をつけっ放しにして、リビングで寝ているのよ」 リビングでは父が、ばつの悪そうな顔をして座っていた。話を聞くと、次のような経緯だった。 10月15日の午前10時半頃、自宅の固定電話が鳴った。出ると、自動音声の女性の声が一方的に話し始めた。 「こちらはNTTドコモです。お客様の料金未払いにより、この電話の通信を至急停止いたします」 それだけ言って、電話は切れた。すると10分後、また電話がかかってきた。今度は生身の女性の声だ。 「さきほどご案内があったと思いますが、至急通信を停止することになりました。お客様が契約している2台目の携帯電話の料金が未払いになっているようです」 携帯電話は1台しか持っていないと伝えると、女性は未払いだという2台目の携帯電話の詳細について話し始めた。 「青森県十和田市で購入されたものです。購入日は6月11日となっております。電話番号は070‒○○○○‒○○○○。未払い料金は18万5973円となっております」 そもそも青森なんて行っていない。明らかにおかしいと言うと、女性は「お客様の情報が不正に利用された可能性があります」と言う。 「最近こういったトラブルが多いんです。警察と連携が取れていますので、このままお待ちいただければ、青森県警にお電話を転送いたします」
警察官を装った男が……
コール音の後、30代半ばほどの男性が出た。 「青森県警捜査二課です」 経緯を説明すると、最近、その手の事件が流行っているのだという。 「話が長くなるので、LINEのほうに移行していただけますか?」 メールアドレスを伝えると、LINEの二次元コードが送られてきた。友だち追加したところ、警察手帳の写真が送られてきたのち、ビデオ通話の着信がきた。こちらの映像は映し出されているが、先方はカメラを起動していないようだ。 「少し調べたところ、○○さん(父の名前)の個人情報がほかの事件でも使われているようです。現在、金融庁が中心になって、犯罪組織のマネーロンダリングに利用された銀行口座をピックアップしているのですが、○○さん名義の口座が使われているようです。6000万円のマネーロンダリングに協力した容疑者として、○○さんの名前があがっています」 携帯料金の未払いだけかと思いきや、そんな大きな犯罪に巻き込まれていたのか……。オタオタしていると、男性がまくし立てる。 「○○さんは身の潔白を証明する必要があります。ほかに金融資産は何をお持ちですか?」 銀行預金と国債を少しばかりで、あとは何も持っていないと伝える。すると男性は言う。 「すべての金融資産を申告しなければ、潔白は証明されませんが、大丈夫ですね?」 そこでタンス預金が200万円あることを白状した。男性は少し間を置いたのち、捜査に協力してほしいと言ってきた。 「これは極秘の任務なんです。犯人たちに捜査を悟られると逃げられてしまう。だから家族にも言わないでほしい。犯人が捕まれば、○○さんの潔白も証明されます」 何をすればいいか聞くと、この通話を繋いだまま、口座がある銀行に向かってほしいと言う。