卓球のTリーグは成功だったのか?
だが、新チーム設立には複数のハードルがあり、中でもトップレベルの選手獲得とチームの金策は一筋縄ではいかない。まずTリーグでは各チームに必ず1人、直近2シーズン以内の世界ランキングが10位以内もしくは五輪や世界選手権のシングルス3位以内などのトップレベルの選手(Sランク)を入れるというルールがある。しかしながら獲得競争は厳しく、2019年3月時点の世界ランクを例にとると、男子上位10人のうちTリーグに参戦していないのはトップ3の中国人選手とドイツ人選手の4人だけ。また女子は6人いるが、そのうち5人は中国人選手、そして世界ランク7位の伊藤美誠(スターツSC)という顔ぶれだ。 五輪イヤーにかかる来シーズン(2019-2020シーズン)、こうしたトップクラスの外国人選手、しかも日本が最大のライバルとし、相手も日本を警戒する中国人選手の獲得は現実的ではない。日本人の伊藤も東京2020五輪と代表争いに専念することを宣言している。 ちなみにTリーガーの契約は年俸制で、トップクラスの選手で3,000万円程度といわれる。また、チームの年間運営費は総じて2億円前後。開幕当初のリーグの説明によれば、その一部はチケット収入やグッズ収入、放映権料やスポンサー収入などの分配金で賄われるということだったが、初年度とあって計画通りにいかない面もあったようで、男子チームの一角である琉球アスティーダの早川周作代表は、「リーグに頼らずやっていけるチーム作りもしていかないと」と危機感を口にする。 プレーオフ・ファイナルを終え、初年度の約20億円のリーグ運営費は入場料とスポンサー収入などで収支の目処が立ったとする松下チェアマン。スポンサーは家電量販店「ノジマ」を冠スポンサーに獲得したのをはじめ、オフィシャルスポンサー6社など合わせて22社にのぼる。3シーズン目からチーム数を増やすにはクリアすべき課題や改善点も少なくないが、肝心の選手たちはといえば、Tリーグでの経験が糧になったと口を揃える。これは明るい材料である。 中でもリーグトップの13戦全勝で前期MVPおよび年間MVPに輝いた早田ひな(日本生命)は、国内外の大会で試合の主導権を握れるようになった要因のサービスとレシーブに触れ、「この1年間、重点的に練習してきたが、使うタイミングが練習と試合でかけ離れていた。それを上手く実行できたのがTリーグの舞台」と効果を語った。この紛れもない選手たちの成長を2年目以降のTリーグの魅力アップにつなげていってほしい。 (文責・高樹ミナ/スポーツライター)