建設業界、脱炭素の資材に見いだす商機 国内排出量1割強のCO2排出削減へ
二酸化炭素(CO2)の国内排出量の1割強を占める建設業界で、資材の脱炭素化をアピールする動きが広がっている。エアコンや照明などによる建物の省エネ化が進む一方、建築段階での取り組みは遅れており、環境配慮の技術や製品で商機を見いだすのが狙いだ。(共同通信=安村友花) 清水建設は千葉県印西市にある物流施設の基礎部分に自社開発した「バイオ炭コンクリート」を使った。成長中に大気のCO2を吸収する木材を炭化させ、セメントに混ぜ込むことでコンクリート内部に炭素を封じ込める仕組みだ。 技術研究所企画部の小島啓輔(こじま・けいすけ)主査(42)は「CO2を大量に出す建築段階での除去は、排出量の実質ゼロを目指す上で欠かせない」と指摘する。従来品より2~3倍値が張るが、取引先の環境意識の変化を感じるという。 清水建設は、製鉄過程で発生する副産物の「スラグ」を混ぜた低炭素セメントとバイオ炭を組み合わせ、CO2の排出量より削減量が多くなる技術も確立した。強度は一般的なコンクリートと同程度で、従来の機材で対応可能だ。再利用してもCO2は固定され続け、100年後の残存率は90%を超えると試算する。
「CO2削減量を見える化したことで、お客さんの関心も引きやすい」。テント倉庫やドーム球場の屋根などに使われる「膜構造物」の製造、販売を手がける山口産業(佐賀県多久市)の山口信之(やまぐち・のぶゆき)取締役製造部長(35)は手応えを語る。膜屋根は原材料調達から廃棄までの排出量が金属製屋根に比べ約66%少なかった。 同社調査では建物外観をメッシュ状の膜で覆うと室内での体感温度が最大7度下がり、省エネ効果があることも判明。山口取締役は「今後は脱炭素や省エネが取引基準の一つになる」と見通す。 国内の森林面積の約2割を占める北海道では資源循環を訴え、需要の掘り起こしを目指す。北海道は2022年度に出荷したトドマツとカラマツ計約98万立方メートルのうち、梱包(こんぽう)やパレットなど安価な加工材向けが37%で、住宅用などの建築用途は18%だった。 北海道木材産業協同組合連合会(道木連)の工藤森生(くどう・もりお)専務理事(61)は「流通の多いスギより頑丈で材質も悪くないが知名度が低い」と嘆く。
道木連は、伐採面積の約9割で新たな木を植え直しており、道産木材の使用が資源循環と脱炭素に役立つ点を前面に打ち出して販路を拡大したい考え。工藤さんは「付加価値を付け、建築材として高い値段で買ってもらいたい」と話している。