国策ラピダスとTSMC“2つの戦略”で決定的な差、早大・長内教授が「ビジネスにストーリーがない」
ソニーや自動車産業というビジネスのストーリーが見えていて、それに必要な技術水準がある。必ずしも最先端技術が必要なのではない、というストーリーを実際に実現させたこと自体が日本では画期的だ。 加えて、第2工場、第3工場と連続的に投資を進めていっているところも理想的。既存工場からの利益を次の投資に回すという当たり前のことをやっている。 「現行の技術で失敗したけど、新しい技術で挽回するんです」という発想を日本は繰り返してきた。だがこれでは投資の原資がどんどん先細っていくので、結局いつまで経っても勝てない。こうした点がラピダスとは対照的だ。
――今は別々で動いている、TSMC熊本とラピダスのプロジェクトをつなげる提案もしています。 2つのプロジェクトを1つの戦略でま とめる会社を実際に作るかどうかは別として、新しいプロジェクトや投資を行うためには、基本的には既存のビジネスから得た収益を流すに尽きる。それができる構図を日本としてどう作るかが重要だ。 政府は両方にお金を出している立場なので、そうした連携にうまく持っていければベストだ。 ――そもそも、政府が特定の産業や企業に多額の公費を投入することの是非についてはどう考えますか?
中途半端な投資は意味がないので、ある程度まとまった額を拠出したことは評価できる。あとは、まとまった額を出すからには、簡単に諦めないでほしいということだけ。中途半端に進めて、結局アメリカに売却するというのが、いちばん避けなければならないストーリーだ。
石阪 友貴 :東洋経済 記者