「僕は猜疑心が強かった」ーー除隊から1年、チャン・グンソク、抱えていた双極性障害、再スタートを語る
職場にいち早く溶け込むべく、“芸能人のスイッチ”をオフにしても、周りの人との距離を感じていた。 「最初はみんなスターのチャン・グンソクとして僕に接していたんです。でも、毎日会って会話を交わしていくうちに、だんだん軍人として出勤するチャン・グンソクに変わっていきました。軍人として接してもらえるようになってから、会話ができるようになった。1カ月経ってやっと親しくなって、それぞれの人の話を聞くようになって」
訪れた気持ちの変化
間近で「一般の人たちの日々」を目にすることが、気持ちに変化をもたらした。 「消防災難本部で僕を担当していた4つ年上の部長の夢は、1カ月に一度ゴルフに行くこと。その隣では株に熱中している人もいました。株とかビットコインとか、好きな人が本当にたくさん。驚きました(笑)。それぞれが好きなことを持っている。そういうことを知るのが楽しかった。もともと僕は、僕が世界の主人公で最高だという気持ちがあったんです。でも、兵役で気づいたのは、誰もが自分の世界の主人公だということ。だから毎日頑張っているし、意味があるのだと思った。隣の人の心を理解する。少しだけかもしれないけれど、小さな習慣が変わって僕の気持ちに余裕ができた。考え方自体が元気になったんです。ネガティブからポジティブに」 インタビュー中、日本語でなめらかに言葉を紡いでいたが、一度だけ、「ああ、これは韓国語で答えてもいいですか。具体的な話だから」と韓国語で語ったことがある。上記の話の流れで、「『考え方』とは? どのようにネガティブからポジティブになったのか」と問いかけたときのことだった。 「もともと僕は、疑い深い人でした。僕がいた世界には、いい人もいるけど悪い人も多い。だから、いつも相手を疑いながら、自分が傷つかないように心の扉を閉じてきたんです。ポジティブに変わったのは、消防災難本部のように、世の中にはいろんな人がいるって知ったから。いろんな人を見ているうちに、いい人だとか悪い人だとか、僕が判断する基準はないと気づいた。僕と合うか、合わないか。それだけ。自分がその人を信頼できるかどうかが大事だと思うようになったんです」 こみ上げるものを隠すように両手で鼻の周りを覆い、さりげなく顔を斜め上に向けた。