ローラはなぜアバターをつくり出したのか? 『作家、本当のJ.T.リロイ』
映画で語られる、アバターが生まれた経緯と独り歩きを始めるまで
――映画では、あなたの言葉で、J.T.が生まれた経緯、アバターとなったサバンナがJ.T.なっていく様、たくさんのセレブとの友情とゴシップ、あなたとアバターの関係などが語られていきます。どのエピソードを、どう使うかは監督が決めたのですか? それとも一緒に? ローラ:監督が決めました。すごく複雑なストーリーなので、たくさんのエピソードを切らなければなりませんでした。テレビシリーズを作ろうという話もあります。映画はどちらかというとサバンナの話。いま自叙伝を書いていますが、書いているといかに私が真実をフィクションに託して述べていたかが分かります。たとえば、“上司との喧嘩”を、“ゴジラと怪物との戦い”とするように。映画は、よくできていると思います。ただ観るとすごくつらいので、私はもう観られないかもしれません。
――映画では、あなたの語りと同時に、ボノやコートニー・ラブらの肉声が録音された大量の音声テープと、映像が使われています。それらはどういうふうに録音、撮影、そして保存されていたのですか? ローラ:電話の場合は、留守電機能で録音していました。テープは、母がオープンリールの録音機で記録する人だったので、それを使いました。本作の監督であるジェフ・フォイヤージークのドキュメンタリー映画『悪魔とダニエル・ジョンストン』(05)の主人公ダニエルもいろいろ記録する人でした。子どもの頃に虐待を受けた子は、自分の中の神聖な場所を示す“磁石”として記録をするんじゃないかと思います。いろいろな人が言った、言わないでもめることを避ける意味もあります。私は、真実を記録する意味と、私の半分クレイジーな部分を客観視するためもあり、記録しています。記録する習慣は痛みからきている部分もありますが、ジャーナリストになりたかったこととも関係あるのかもしれません。
――J.T.を演じていたサバンナとは、いまでも話すことはありますか? ローラ:インスタグラムを通じて少し。もとは家族ですし。家族としてものすごくいろいろな経験を一緒にしてきました。いいえ、ある意味、家族を超えてものすごい冒険を一緒にしてきたし、ものを一緒に作ってもきました。でもそれはまだ完成していない感じもあります。同時にまだ痛みもありますね。 「新世紀エヴァンゲリオン」の綾波レイ。ローラの青い髪を見たとき、パンクというよりコスプレという言葉が思い浮かんだ。素でいることが苦痛なら、むしろエヴァを操縦しているほうが、自身を解放できる。突拍子もない発想だが、J.T.エヴァを操縦するローラの像が思い浮かんだ。そして意志を持ったエヴァが勝手に動き出したとき、あの物語では誰が攻めることができるというのか。アバターは彼女の“汎用人型決戦兵器”だったのかもしれない。 (取材・文:関口裕子、撮影:伊藤さゆ) 『作家、本当のJ.T.リロイ』4月8日(土)より新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷ほか全国順次公開