米大統領選投票始まる 女性初か復帰か ハリス氏とトランプ氏大接戦
米大統領選は5日、投票日を迎えた。5日夜(日本時間6日)に投票は締め切られ、即日開票される。直前の世論調査でも、女性初の米大統領を目指す民主党のカマラ・ハリス副大統領(60)と、132年ぶりの大統領経験者の返り咲きを狙う共和党のドナルド・トランプ前大統領(78)が大接戦となっており、当落が判明するのは6日以降になるとみられる。 【図解でわかる】歴代の米大統領、人気なのは誰? フロリダ大学の米国選挙プロジェクトによると、4日までに8200万人以上が期日前投票や郵便投票を済ませた。米国は国内に時差があり、5日は東海岸から順に投開票が進んでいく。 大統領選では全米50州と首都ワシントンに割り当てられた計538人の選挙人の獲得数を競う。選挙分析機関「クック・ポリティカル・リポート」によると、ハリス氏は226人、トランプ氏は219人の選挙人獲得が有力視され、激戦7州の93人の行方が勝敗を左右する。 政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス(RCP)」の各種世論調査の集計(4日時点)によると、全米の支持率もハリス氏48・7%、トランプ氏48・6%とほぼ並んでいる。両候補とも終盤戦でも互いに決め手を欠いた。 ハリス氏は、ジョー・バイデン大統領(81)の選挙戦からの撤退を受けて、8月に民主党候補に指名された。「前に進む新たな道」を掲げ、世代交代を主張。独善的な言動が目立つトランプ氏を「民主主義に対する脅威」と位置づけ、終盤では「ファシスト」「独裁者」と批判を強めた。 人工妊娠中絶を選ぶ権利を擁護する姿勢を強調し、女性や若者に支持を広げた。中絶が大きな争点になった2022年の中間選挙では、女性票が民主党善戦の原動力になった経緯があり、ハリス陣営は当時の再現を期待している。ただ、政策の具体化が遅れており、「独自色が見えない」という批判はくすぶっている。 ハリス氏は選挙戦最終日の4日は東部ペンシルベニア州で計5カ所を回った。激戦7州のうち、中西部ミシガン、ウィスコンシン両州では世論調査でややリード。ペンシルベニア州を含めて伝統的に民主党が強い「青い壁(ブルーウオール)」を守れば、当選ライン(270人)に届く。 3回連続の大統領選となるトランプ氏は、バイデン政権下で進んだインフレ(物価高)と不法移民の増加への批判を前面に掲げてきた。強固な保守派の支持層に加えて、中南米系や黒人など民主党の支持基盤の切り崩しを図った。ただ、政敵への政治的報復を示唆する発言や、選挙結果の受け入れを約束しない姿勢など、言動には批判も根強い。 トランプ氏は23年に四つの刑事事件で起訴され、24年5月には親族企業の業務記録改ざん事件で有罪評決を受けた。21年に支持者らが起こした連邦議会襲撃事件を含めて、有権者の信頼を失ってもおかしくない事案が続いてきたが、「政治的な魔女狩りの被害者」と主張することで逆に支持者の熱気を呼び覚ました。24年7月の銃撃事件で負傷した際も「不屈の指導者」を演出した。 トランプ氏は4日、南部ノースカロライナ州と、ペンシルベニア、ミシガン両州を回った。共和党の基盤が強い南部を制し、初当選した16年のように「青い壁」を突き崩すことが勝利の条件となる。 激戦州で大接戦となった場合、結果が判明するまでに数日以上かかる可能性もある。当落が判明した後も、両陣営が司法闘争を展開する公算が大きく、25年1月の次期大統領の就任式まで混乱も予想されている。【ワシントン秋山信一】