「強者と弱者の間に立って何が中立か」…水俣病から見える差別、人権問題「加害者を許すか決めるのは被害者」 相思社設立50年、水俣市で記念講演
水俣病の調査研究を行う「水俣病センター相思社」(熊本県水俣市)の設立50周年記念講演が4日、同市総合もやい直しセンター「もやい館」であった。フォトジャーナリスト安田菜津紀さん(37)が登壇。鹿児島県などから約200人が来場し、水俣病から見える差別や人権問題を考えた。 【写真】〈関連〉「身近な行動から差別はなくせる」と訴える安田菜津紀さん=4日、熊本県水俣市
安田さんは、水俣病研究の第一人者で患者救済に尽くした医師、故・原田正純さん(享年77歳)=鹿児島県さつま町出身=の「弱者の側に立つことが真の中立。強者と弱者の間に立ってなにが中立か」との言葉を紹介。「ときに社会は『謝っているんだから』と、被害者に圧力をかけるが、加害者を許すかどうかを決めるのは被害者の権利だ」と訴えた。 「分かり合えない人と歩み寄るには」との会場からの質問に、「自分が苦手な人が不当な扱いを受けた時、その行為自体を問題だと捉えられるかどうかが大事。身近な行動から差別をなくし人権を守る社会づくりはできる」と呼びかけた。 薩摩川内市の無職男性(72)は「国など権力を持つ側からの抑圧という点で水俣病と原発問題が重なった」と話した。
南日本新聞 | 鹿児島
【関連記事】
- 離島手当は今どき月1000円、国の真剣さは伝わらない。そもそも「加害者の国に被害者がお願いするのはおかしい」 水俣病再懇談、獅子島が悲痛な願いに包まれた
- 水俣病マイクオフはなぜ防げなかった? 「国民が関心を持っていれば起きなかった」と識者 同じ問題を繰り返さないために必要な視点とは
- 「被害者に寄り添って…」とよく言うけれど、その姿が見えないのです。団体側への要求には「ゼロ回答」、正常な対話ができた喜びと落胆。水俣病再懇談は平行線をたどった
- これが水俣病に対する国の本質か…慰霊式後、環境相との対話は1団体3分間、超えるとマイクの音が消えた 「最後まで言わせてやれよ」患者団体の怒り収まらず
- 水俣病と聞くだけでうんざり…少女は鹿児島で暮らし〝心の重し〟が外れた。公式確認から68年…「今も被害は続いている」 相思社職員の28歳は、足元の小さな公害に目を向ける