米FRB高官、利下げ慎重に進める考え インフレリスク警戒
Ann Saphir [13日 ロイター] - 米労働市場が急速に冷え込むかもしれないとの懸念が今年浮上したが、米連邦準備理事会(FRB)の政策担当者らは再びインフレリスクに照準を合わせ、利下げのペースと幅を見定めようとしている。 労働省が13日発表した10月の消費者物価指数(CPI)は、前年比2.6%上昇し、前月の2.4%から加速した。エコノミスト予想と一致した。 金融市場では12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利下げが実施されると予想している。パウエル米FRB議長は14日にダラスで講演し、最新の経済見通しを示すとみられるが、市場の見方を支持するかどうかは明らかでない。 FRBの政策担当者らは13日、物価圧力が残るものの労働市場が健全であることを示すデータを踏まえ、慎重に対応する考えを示した。 セントルイス地区連銀のムサレム総裁はメンフィス経済クラブの昼食会で、「現在の情報に基づく私の基本シナリオでは、インフレ率は中期的に2%に向かうと予想している」と発言した。 しかし、労働市場が悪化するリスクは低下したかもしれないが、「インフレ率が2%に達しなかったり、上昇したりするリスクが高まっている」とも述べた。 ダラス地区連銀のローガン総裁も、エネルギー関連会合で、インフレ率を2%の目標に戻す取り組みを終えるには、「さらなる利下げが必要になる公算が大きい」との見方を示した。 その上で、「慎重に進めるのが最善」であり、「中立金利を超えるような大幅な利下げを行えば、インフレが再加速しFOMCは方向転換を迫られるかもしれない」と述べた。 カンザスシティー地区連銀のシュミッド総裁は同じ会議で、「金利が今後どの程度低下するか、最終的にどの水準に落ち着くのかはまだ分からない」と語った。 FRBの政策金利は現在4.50─4.75%となっている。ローガン氏によれば、この水準は中立金利のレンジの「ちょうど上限」との見方を示した。来月のFOMCでの利下げが適切かどうかについて直接言及しなかったが、早めに利下げペースを減速すべきとの考えを示唆している。 大統領選後に設備投資や個人消費が増加してインフレ率が上昇するリスクに言及した。労働市場は減速しているが、大幅に悪化しているわけではないとの見解を示した。 また、最近の国債利回りの上昇はFRBが意図した以上に景気を減速させ、雇用に下振れリスクをもたらす恐れがあると述べた。ただ、中立金利は近年上昇しているとみられるため、FRBの政策はさほど景気にブレーキをかけていない可能性があるとも語った。 <正しい方向> ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁もブルームバーグ・テレビのインタビューで、中立金利が上昇している可能性を指摘した。 10月のCPIはインフレが正しい方向に向かっていることを示しているようだとし、「それについては自信がある」と述べた。 その一方で、「われわれは待つ必要がある。決断を下す前に、あと1カ月から6週間はデータを分析しなければならない」と語った。 アナリストらは、今回のCPIは12月の利下げの妨げにはならないとみている。次回のFOMCまでにもう1回CPIの発表が行われる。