ジワジワくる宇宙人「ショウキラン」|植物ライター・成清 陽のヤマノハナ手帖 #38
ジワジワくる宇宙人「ショウキラン」|植物ライター・成清 陽のヤマノハナ手帖 #38
登山&撮影をライフワークとする花ライターがお送りする、高山植物の偏愛記。静かに、しかしアツ~く、お花をご紹介します! お盆もすぎて、そろそろ子どもたちの運動会。ひつじ雲の下、よーいドン! っていきたいとこですが、何なんでしょう、今年の異常な蒸し暑さ。長男とともに訪れた山小屋さん(標高2、800m)でも、「今年は湿気が強くて……」と小屋番さんがこぼすほどでした。さて、そんな今回、涼しさに焦がれつつ想うは、初夏までのあの涼しさ。冷涼な森にひっそりとたたずむ、一風変わったこの野生ランをご紹介しましょう!
神出鬼没なるラン一族
Data ショウキラン(ラン科) 一般的な花期:6~7月 おもな生育場所:湿った林内など。 2回コマクサが続きました、本連載。そしてピンクつながりということでバトンがわたったのが、こちらショウキランです。奇しくも本連載38回目にて、植物マニア御用達のラン一族が、初登場(拍手~! )。で、なんでそんなに遅いのかって? そりゃ、ランたちがあまりに神出鬼没だから。人間にたとえるなら、住所不定ってわけなんですよ。とくにショウキランは葉をもたないので、ツボミが出るまで待つしかないんです~!
“スティッチ”の名の由来は
さて、そんなショウキランですが、お名前のショウキって「正気」? はたまたナウシカの瘴気? ? 「(どうかナウシカであってくれ~)」なんて筆者は思うわけですが、じつはまったくこれらと関係なくて、中国由来の神様・鍾馗なんだとか。オジサンとして描かれるこの神様の「ヒゲと冠が花の形に似ているから……」っていうけど、これには説明不足感が否めませぬ。むしろ、左右の耳(? )がキャラクターの「スティッチ」か「チェブラーシカ」を思わせません? ちなみに、スティッチはエイリアンの試作品、チェブラーシカは正体不明とのこと。神秘的に見えることは事実です!! 。
まんまるツボミから……アゴ!
ランという花は、けっこう好みが分かれると思うんです。というのも、いわゆる「フツーのお花」という印象が薄くて、エイリアン的なパーツがあったり肉質だったり、ヘンにビビッドだったり(ショウキラン、ぜぜ全部当てはまる!? )。とくにショウキランの場合、丸っこいピンクのツボミはまだかわいく思えるわけですが、ツボミから最初に登場するパーツが「アゴ」。ヒゲこそ生えてないけど……って、鍾馗の由来になったの、ココか?