中国、金融政策の枠組み抜本改革か-埋もれていた習氏発言がきっかけ
S&Pグローバル・レーティングのアジア太平洋地域チーフエコノミスト、ルイス・クイジス氏は、「主要な政策金利を金融市場に連動する一つの短期金利とすることは、金融政策の枠組みを徐々に改革していく上で、明らかなさらなる一歩となるだろう」と語った。
金融政策の枠組みをよりシンプルで透明性の高いものにし、ほとんどの先進国で実施されている「業界標準」に近づけることになるとの認識だ。
また、こうした変更が実行されれば、人民銀は短期金利だけでなく、長期金利への影響力を高めることになるとの見方もある。
HSBCのアジア担当チーフエコノミスト、フレデリック・ノイマン氏は人民銀の国債売買について、「実質的にイールドカーブ全体を管理することができるさらなるツールだ」と指摘。
日本銀行のイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)を連想させるとも述べ、中国はクレジットを急拡大するよりも効率的に利用することに重点を置いていると論じた。
潘総裁の講演から多くのアナリストが得た結論の一つが、人民銀がこれまで主要な金融手段の一つとしていた中期貸出制度(MLF)の1年物資金をそれほど重視しなくなる準備をしているということだ。
約10年前の導入以来、MLFは人民銀が経済に資金を供給し、市場金利を誘導する主要な経路となってきた。
しかしここ数カ月、銀行の資金需要は低迷。他の借り入れコストが大きく低下しているにもかかわらず、1年物MLF資金の金利は6月まで10カ月間据え置かれている。
MLFを利用できるのは選ばれた銀行だけだ。流動性管理の代替手段として国債を売買することで、人民銀はより幅広い市場参加者の金融環境に影響を与えることが可能だ。
また、MLFに比べ、7日物リバースレポ(銀行が毎営業日利用できる短期融資)金利は政策の微調整により大きな柔軟性をもたらしている。
金利コリドー
みずほセキュリティーズアジアの中国担当シニアエコノミスト、周雪氏によると、潘総裁は中国の金利市場が十分に成熟し、人民銀が複数の「いかり」を使って金利を誘導する必要がなくなったと考えているようだ。