約338億光年かなたの銀河「JADES-GS-z14-0」を発見 観測史上最も遠い銀河
■観測史上1位と2位の銀河を新たに発見!
ウェッブ宇宙望遠鏡の観測プログラムの1つである「JADES(JWST Advanced Deep Extragalactic Survey)」では、先述した「JADES-GS-z13-0」を含め、非常に遠方にあると思われる銀河が複数見つかっています。その中にはJADES-GS-z13-0の赤方偏移の値である13.20を上回る、14以上と測定された3個の天体が含まれています。これらの天体はいずれも2022年にウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラ「NIRCam」と近赤外線分光器「NIRSpec」を使って得られた観測データをもとに推定されました。 この3個の天体は、単純に考えれば観測史上最も遠い銀河の記録を更新しますが、これまでは確定的なことは言えませんでした。特に、3個の中で最も遠いかもしれない銀河の候補は、より近い距離にあると推定される別の銀河が部分的に重なっているために、慎重な分析が必要でした。ウェッブ宇宙望遠鏡のNIRSpecと中間赤外線装置「MIRI」を使用して2023年10月に行われた観測では、別の銀河が重なっている候補を含む3個とも実際に遠方の天体である可能性が高まったものの、まだ決定的ではありませんでした。 Carniani氏を筆頭とする国際研究チームは、2024年1月に実施したNIRSpecによる合計10時間の追加観測で得られたデータと過去の観測データを組み合わせた分析を行い、決定的な答えを出しました。 まず、3個のうち1個の天体は詳しい分析を行うために必要なデータの一部が不完全であったため、分析から除外されました。次に、残りの2個は分析を行えるだけのデータが揃ったため、暫定的に「JADES-GS-z14-0」および「JADES-GS-z14-1」と名付けられました(※3)。 ※3…この暫定名が付けられるまでは、JADES-GS-z14-0は「JADES-GS-53.08294-27.85563」、JADES-GS-z14-1は「JADES-GS-53.07427-27.88592」というIDが付与されていました。後ろの長い数字の部分は天球における座標を表しています。 詳しい分析の結果、赤方偏移の値はJADES-GS-z14-0が約14.32(地球からの距離は約338.1億光年、135.0億年前に存在)、JADES-GS-z14-1が約13.90(同じく約336.2億光年、134.9億年前に存在)で間違いないという結論が得られました。これらの結果は、いずれもこれまでの最遠記録であるJADES-GS-z13-0(同じく約333.0億光年、134.7億年前に存在)を上回る値であるため、観測史上JADES-GS-z14-0は1番目、JADES-GS-z14-1は2番目に遠い銀河となります。 特に注目されるのは、観測史上最も遠い天体となったJADES-GS-z14-0です。まず、注目されるのはその大きさです。JADES-GS-z14-0の直径は現在の宇宙における銀河と比べればかなり小ぶりな約1700光年(260±20パーセク)ですが、宇宙誕生からわずか約2億9000万年後に存在した銀河としては驚異的な大きさです。 また、JADES-GS-z14-0はウェッブ宇宙望遠鏡のMIRIによる2023年10月の観測でも捉えられており、赤方偏移によって引き伸ばされた可視光線領域のスペクトルを復元することができました。その結果、JADES-GS-z14-0には水素と酸素の電離したガスが存在することが示されました。宇宙誕生直後から存在する水素はともかく、恒星の内部での核融合反応でしか生成しない酸素が恒星から離脱した状態で大量に存在するというのは驚きの発見です。これは、約2億9000万年後の宇宙ではいくつかの恒星がすでに寿命を終え、核融合反応で生成された重い元素をまき散らしていたことを示しています。