大阪ミナミ「外国ルーツの少女」の成長【中編】 父子家庭で父が倒れた高2のメイと支える人たち
「救急車よびなさい」と促すと、メイの家へ駆けつけた。着いたのは救急車とほぼ同時。父娘と一緒に救急車に乗り込み、病院へ向かった。不在着信を見て電話を折り返してきたキムさんも、間もなく病院に駆けつけた。 ■父は一命をとりとめたが… 検査の結果は脳出血。すぐに緊急手術を受けることになった。 看護師から「お父さんに何か言葉をかけてあげて」と言われたメイだが、頭が真っ白で言葉が出ない。「がんばれ」と一言しぼり出すのがやっとだった。
夜の病院の廊下で4時間あまり、開頭手術が終わるのを待った。キムさん、ウカイさんとは、高校生活や進路の話をした。不安を紛らわせてくれているんだな、とメイは感じていた。 手術が終わり、医師に呼ばれて説明を聞いた。正三さんが一命をとりとめたことを知らされ、メイはひとまず胸をなで下ろした。 しかし、続く話から、正三さんの身体に脳出血の後遺症があることがわかった。正三さんは長期入院を余儀なくされた。 父子家庭に育ったメイには頼れる親族もおらず、1人で生活しなければならなくなる。
入院の手続きはキムさんとウカイさんが手伝った。メイは正三さんの着替えを取りに戻り、慌ただしい時間を過ごした。それが一段落すると、1人で家に帰った。 そして翌日は、1人きりで家にいた。少し落ち着いて先のことを考えると、不安で胸が押しつぶされそうだった。 「このままやと、やばい」 まず相談したのはマナミだった。メイをMinamiこども教室に誘った同級生だ。南小学校を卒業した後は別の中学、高校へと進んでいたが、互いに何でも話せる唯一無二の間柄だった。
「今、ちょっとやばいねんけど」 そう言ってメイが事情を話すと、マナミは「とりあえず、ウカイ先生の家に泊まらせてもらった方がいいんちゃう?」と提案した。 メイの頭にも思い浮かんではいたが、遠慮もあって自分からは言い出せそうになかった。どうやってお願いを切り出すか、マナミが一緒に考えてくれた。 その後、思い切ってウカイさんに電話をかけた。マナミのアドバイス通り、自宅に泊まらせてもらえないかと尋ねた。