「石丸伸二さんの切り抜きで月500万円稼いだ人も」玉木雄一郎の選挙を支えた“動画切り抜き職人”はボランティアと呼べるのか?
玉木氏の「切り抜き動画」の認識
こう指摘する森氏は、玉木氏本人にも“直撃”している。 〈森 玉木さんがやられてきたライブチャットなどのネット戦略が効いたことはよく分かります。ただ一方で、「切り抜き動画」をつくる「切り抜き職人」が、(先の都知事選で躍進した)石丸伸二さんの後に、今回、玉木さんのもとに集まって働いたのではないですか。「たまきチャンネル」でも「切り抜き大歓迎」と述べていますが、この点について、ご自身ではどう思われていますか。 玉木 「ボランティアのネット化」ですね。「ネットボランティア」と言ってもよいかもしれない。これまではチラシを配って情報伝達をするボランティアの方々がたくさんいてくださったのですが、「切り抜き動画」というのは、いわば「ネット時代のデジタルチラシ配り」です。 森 しかし「切り抜き職人」にとっては、それがお金になるわけですね。 玉木 こちらの陣営からお金を払っていないという意味では「ボランティア」ですが、彼ら自身が自分で儲かる。つまり課金システムによる収益化によって、そこに「ブースト」をかける効果があることは、これまでと大きく違うところだと思います。しかし大事なのは「コンテンツ」です。中身が「面白いもの」「興味深いもの」で、「伝わるもの」でないと出回りません。だからこそ「政策」とか「理念」が大事になります〉
「切り抜き職人」は放置するのか?
こう話す玉木氏だが、森氏の取材に次のようにも述べた。 〈玉木 アテンション・エコノミー、選挙エコノミーが生じていることは間違いないと思います〉 〈玉木 基本的には「表現の自由」を大事にすべきだと考えますが、ここは私もまだ答えを出しきれていないところです。「プラットフォーマーの責任をどう考えるか」ということになると思います〉 公職選挙法第一条にはこうある。 〈この法律は、日本国憲法の精神に則り、衆議院議員、参議院議員並びに地方公共団体の議会の議員及び長を公選する選挙制度を確立し、その選挙が選挙人の自由に表明せる意思によつて公明且つ適正に行われることを確保し、もつて民主政治の健全な発達を期することを目的とする〉 「切り抜き職人」を放置して、果たして「選挙が公平且つ適正に行われる」のだろうか。 森健氏が丹念な取材に基づき、玉木代表と国民民主の躍進の裏側に迫った「玉木代表と国民民主を解剖する」の全文は、12月10日発売の「文藝春秋」1月号(「 文藝春秋 電子版 」では12月9日公開)に掲載されている。
「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2025年1月号