世界「最速」で復活するインバウンド、でも国民が豊かさを実感できないワケ
回復ペースは世界最速レベル
インバウンド誘致に躍起になっていた2000年代前半には「ぜひともいらしていただきたいお客さま」だったインバウンドが、ここへきて「何だか迷惑な人たち」扱いされるようになったのは、3点ほど理由があると思われる。 1点目は、インバウンド増加でオーバーツーリズムが顕在化したことである。もともと、宿泊・飲食業、運輸業など観光関連業界ではコロナ禍で人材が大量離職して、その後も戻りが悪かった。日本人の旅行需要だけで手一杯だったところにインバウンドが急増して、最後の一押しとなった感がある。 2点目は、インバウンドが特定の地域に集中していることである。日本中どこへ行っても満員御礼というわけではなく、東京、大阪、京都、富士山、福岡など特定地域にインバウンドが集中してオーバーツーリズムを引き起こしている。2024年3月の観光庁の宿泊統計を見ても、首位の東京都(482万人泊)の外国人延べ宿泊数は、最下位の秋田県(4620人泊)の実に1043倍である。 3点目は、2022年末以降、日本のインバウンドが世界最速ペースで増えたことである(図表2)。 コロナ禍により、島国の日本は水際対策が本格的に緩和される2022年10月までほぼ鎖国状態だった。海外でも2021年まではあまり海外旅行をしようという機運はなかったが、日本に比べると落ち込みの小さい国・地域が多く、2022年に入ると欧州を先頭にさっそく海外に出掛け始めた。 一方、日本は2022年10月から急激にインバウンドが増加した。2023年のインバウンドを見ると、世界全体が前年比1.3倍の13億人だったのに対して、日本は6.5倍の2507万人である。日本人から見ると、本格緩和で扉を開けたとたんにインバウンドがなだれ込んできたという印象になる。インバウンドは日本のマナーに不慣れで悪目立ちしやすいこともあり、オーバーツーリズムの主犯と見られがちでもある。 もちろん、インバウンド増加にはプラスの面も多々ある。