MIXIの新アプリ「mixi2」の課題…ユーザーの居心地よさと収益確保の両立は実現できるのか
MIXI(ミクシィ)社は昨年12月、新国産アプリ「mixi2」をリリースした。 新アプリは旧mixiと同様、ユーザーは趣味や興味がある「コミュニティ」に参加して、他のユーザーと交流する。旧mixiとの主な違いは「ホームタイムライン」が追加された点だ。ホームタイムラインはX(旧Twitter)と似たような構造で、フォローしたユーザーの投稿や、自分が属するコミュニティの投稿がタイムラインに表示されてくる。他のSNS同様、いいね機能やリポスト機能もある。 斎藤元彦知事の“疑惑”長期化で「オールドメディア対SNS」も第二幕へ…ホリエモンの苦言にSNSも賛同 MIXIは2004年に旧mixiをリリース。東証マザーズ(現・東証グロース)に株式上場した初めての決算(07年3月期)での売上高は52億円。mixiの利用者数増加に伴って売上高も伸び、12年3月期は133億円へと成長した。ガラケーやPCのユーザー向けに国内で一躍人気のSNSとなったが、後発のTwitterやFacebookにユーザーを奪われた。さらにスマホが主流になりmixiの存在感は薄れたものの、13年にリリースしたスマホゲームアプリ「モンスターストライク」(モンスト)が大ヒット。同社の売上高はウナギ上りとなり、15年3月期は前年比9倍の1129億円。翌16年3月期は2000億円を突破した。 しかし、モンストのアクティブユーザー数の減少に伴い、20年3月期の売上高は1122億円と激減。プロサッカーチーム・FC東京を擁するスポーツ事業の拡大で24年3月期の売上高は1469億円になるが、営業利益は192億円とピーク時の5分の1。スマホゲームのヒット作も打ち出せず、いまだにモンスト依存の一本足打法から抜け出せていなかった。
個人の思い込みを増長させる懸念も
こうした状況でリリースしたのがmixi2だ。旧mixiで好評だった完全招待制を復活させたほか、タイムラインはXのようなレコメンド(おすすめ)された投稿ではなく、ユーザー自身のフォローを前提にする。レコメンドはユーザーの興味に近い投稿を、SNS側がおすすめとして表示する機能。スマホの視聴時間を延ばす効果がある。しかしSNS依存や、政治的なテーマなどで個人の思い込みを増長させる懸念も指摘される。 「近年のSNSはレコメンドによる情報選別で、ユーザーが心理的に不安になる場面が増加しています。プライバシーの問題も不安の要因にあると考えています」(MIXI広報) アクセス履歴を「勝手に」利用してレコメンドしてくる機能には、プライバシーを侵害されたと感じるユーザーも多い。とはいえ、「不安や不満を感じさせないためにレコメンド機能を外すとユーザーの滞在時間は減り、広告表示が減るというジレンマがあります。ユーザーにとって居心地のよさを目指すmixi2が収益性も担保できるのか」(IT業界関係者)という声も。 レコメンド慣れしたユーザーのSNS疲れを解消しながら業績を改善するのは至難の業だ。 (ライター・山口伸)