渡邉恒雄さんが名医・帯津良一さんに明かしていた“死生観” 「新聞社のトップはいつ殺されても不思議はない」
■タバコは15、16歳から吸っていた 帯 前立腺がんをやっていらっしゃるんですね。 渡 15年前、胃腸の内視鏡検査をしたときに触診で見つかった。最初はステージBって言われたんだけれど、結果的にはステージD1というクラス。リンパ節に1個の転移があった。 帯 でも、15年経てばもう大丈夫ですね。 渡 前立腺がんで入院して、2週間で出てくれと言われたけど、本が読みたくて約1カ月置いてもらった。入院中、素粒子論と宇宙物理学というこの年まで読んだこともない本を山ほど持っていって、徹底的に読みました。で、夕方になると女房、子ども連れて銀座、新橋と食い歩いた。前立腺は消化器じゃないから、なに食ってもいいわけですよ。 70歳にして新しい分野の本を読めたあの期間は僕にとって非常によかった。宇宙物理学の本に、宇宙は将来的には収縮に転じて最後には陽子一個もない世界になると書いてあるわけです。これが非常におもしろい。最後に残されるのは、物質もなにもない空間だけであると。もちろん人類も生命も存在していない。宇宙物理学が進歩すればするほど、この世から神の居場所がなくなっていくという。人間の心に宿る神にしても、生物物理学が進歩すれば神の居場所がなくなっていく。 帯 なるほど。ところで、体にいいことは何かされていますか。 渡 運動はゴルフだけですね。週に1回が原則なんですが、土曜日にしかやらない。日曜日はうちで半日寝て、あとは本を読んでいる。土曜日に雨が降ることがあるので、去年のゴルフは年に25回だったかな。 帯 たばこは相当吸われるんですか。 渡 パイプです、一日中。僕は、紙巻きは吸わないんですよ。あれだと1日100本ぐらい吸いますから。パイプは、まあ燻らせているだけで、十分ニコチンが補給される。がんの権威の先生からは「たばこをやめなければ、あなたは必ず肺がんで死ぬ」と言われましたけど、検査したら、がんのかけらもない。僕は70年吸い続けているんですよ。15、16歳から吸ってたんですからね。禁煙バンザイっていうのは、いったい何事だっていつも怒っているんだよ。 帯 パイプはうらやましいなあ。一回ぐらいくわえてみたい。 渡 僕は一度禁煙したことあるんだよ。会社の役員会で6カ月禁煙できるかどうかで一人1万円ずつ賭けをした。それで結局6カ月できて、十数万円もうけた。その翌日から吸い始めましたね、猛然と。というのはね、その6カ月の禁煙のストレスがひどかった。どういう現象が起きるかというとね、やたら腹が立つ。人を怒鳴る。それでずいぶん迷惑をかけた人がいると思いますよ。だから、たばこはやめないほうがいい。 帯 睡眠はどうですか。 渡 それが問題でね。僕は中学校時代からずっと不眠症なんです。昔はね、中学生が薬屋に行って、ヒロポンとか買えたんですよ。それで集中して勉強するときはヒロポン飲んで2日ぐらい徹夜した。それで寝るときは効率的に寝たほうがいいと、自分で勝手に考えて睡眠剤なんかを飲む。