ドイツの「債務ブレーキ」緩和すべき=メルケル前首相
Thomas Escritt [ベルリン 26日 ロイター] - ドイツのメルケル前首相は26日、財政赤字比率に上限を設ける同国の「債務ブレーキ」について、世界が深刻な時節にある今、緩和する必要があるとの考えを示した。ベルリンで開かれた回顧録の出版イベントでインタビューに答えた。 2021年に退任して以来3年ぶりに実質的な沈黙を破ったメルケル氏は、「ロシアによるウクライナ侵攻以来、状況は一変した。そしてこのことは、気候(変動)を巡る試練と時を同じくしている」と指摘。「そうした状況である以上、債務ブレーキの範囲内で可能な投資の規模でしのいでいくことは不可能だ」と述べ、投資目的に限って債務ブレーキを解除すべきだとの見解を示した。 メルケル氏は在任中、債務危機に陥った南欧諸国に救済と引き換えに厳しい財政支出削減を迫るなど財政規律派として知られ、今回の発言は驚きを呼ぶ可能性がある。 来年2月に見込まれる総選挙を控え、メルケル氏と同じキリスト教民主党(CDU)の党首で有力な首相候補であるフリードリヒ・メルツ氏は、債務ブレーキ改革について明言するよう迫られている。 メルケル氏は退任時にも人気を維持していたが、ロシア産エネルギーに大きく依存した同氏の政策がロシアのウクライナ侵攻につながったとの批判も出ている。メルケル氏はインタビューで「それが役に立つならメルケルのせいだと言いなさい」と語り、同氏を支持する聴衆の笑いを誘った。 メルツ党首が移民管理の厳格化を主張し、欧州の自由な人の移動を終わらせると批判されていることについては「メルツ氏が望むのはそんなことではない。彼は欧州人だ」と擁護した。