そもそも「安保関連法案」とは? 集団的自衛権をどう規定
「重要影響事態」と「存立危機事態」で取れる行動
第3に、自衛隊が取れる手段・行動については、いつでも何でもできるのではありません。脅威の態様に応じてどのような手段・行動が取れるかを一連の改正法案は定めています。 「重要影響事態」の場合に自衛隊が行なうのは、後方支援や捜索・救助など比較的軽い内容です。 「存立危機事態」の場合は、「攻撃を排除するために必要な武力の行使、部隊等の展開」など、武力の行使を伴うような非常に重い内容であり、この中には武器の使用が含まれます。 以上、自衛隊が対応する脅威の種類、行動する場所、目的達成のための手段を見てきました。これらの改正法案の内容は、政府はすべて「自衛」の範囲内と見ていますが、集団的自衛権行使は憲法上認められないという有力な意見があります。 また、「自衛」については、自衛隊だけの問題でなく、日米安保条約に基づく米軍との協力と一体となって行なわれます。後方地域支援は米軍の作戦と一線を画して行なわれるというのが政府の考えですが、相手国は必ずしもそのように理解しないので、後方地域支援であっても戦闘に巻き込まれる恐れがあるという指摘もあり、そうなると憲法違反の問題になりえます。 また、自衛隊の行動の範囲が広がり、協力する国が米国だけでなくなり、多数の国に広がると、多角的な国際協力との境界線が不明瞭になるという問題もあります。 (美根慶樹/平和外交研究所) ※今回の前編では「日本の防衛」を中心にみてきました。後編では「国際貢献」の観点から安全保障関連法案を解説します。
■美根慶樹(みね・よしき) 平和外交研究所代表。1968年外務省入省。中国関係、北朝鮮関係、国連、軍縮などの分野が多く、在ユーゴスラビア連邦大使、地球環境問題担当大使、アフガニスン支援担当大使、軍縮代表部大使、日朝国交正常化交渉日本政府代表などを務めた。2009年退官。2014年までキヤノングローバル戦略研究所研究主幹