アスリートも「職人気質」。用具提供のメーカーが驚いた、五輪選手のこだわりとは
アスリートと切っても切れない関係なのが、競技に使用する用具だ。バスケットであればマイケル・ジョーダンさんのシューズ、野球であればイチローさんのバットだろうか。 【写真】北朝鮮ペアと韓国選手ら、表彰式で「自撮り」 リ選手は緊張した面持ちで…
パリ五輪でも、さまざまなメーカーが選手に用具を提供している。選手を一番近くで支える「相棒」。その生産に関わる人々に話を聞くと、4年に一度の祭典にすべてをかけ、細部へのこだわりを追求するアスリートの姿が見えてきた。(共同通信=浅田佳奈子、河村紀子) ▽既製品に違和感 フェンシング男子エペ代表の見延和靖(37)は、既製品のウエアに違和感を覚えていた。「なかなか自分に合うものが見つからず、ストレスを抱えていた」という。 その見延のために競技用と移動時のオリジナルウエアを開発した企業がある。出身地・福井県のアパレル企業「アタゴ」だ。 アタゴは1927年創業。OEM(相手先ブランドによる生産)を主とし、取引先には大手スポーツメーカーがずらりと並ぶ。元々は軍手や軍足を製造していた。その後、肌着や生地を手がけるようになり、近年はサッカーやバスケットボールの日本代表ユニホームなども作っている。取り扱う生地は優に数千種類に上るという。
福井県越前市出身の見延と、福井市のアタゴ。つないだのは見延をかねて応援していた企業だった。2023年3月、世界で活躍する選手を地元が支えるプロジェクトがスタートした。 ▽「フェンシング職人」のこだわり アタゴが提案したのは、汗処理のため特殊な加工を施した生地や、自然な伸縮性を備えた生地だった。仕上げには10カ月ほどかかったという。設計を担当した田中芹那さん(29)はやりとりの中で驚かされることがあった。見延が数センチ、数ミリ単位の差に神経を使っていたことだ。「フェンシング職人」を自負する見延らしさの現れだった。「着ている物にもこだわっていることが、結果につながっているんだと感じた」と振り返る。 2023年11月からのシーズンで着用しているインナーの胸元には、アタゴのロゴがあしらわれた。ロゴは社員からデザインを募集し、全社員による投票で決めた。 普段は裏方に徹する企業のアタゴにとっても五輪は大舞台だ。プロジェクトに携わった三田村知紀さん(37)は「これまで僕らの会社が前面に出ることはなかった。ロゴを胸につけて戦ってくれて現場は頑張りがいがある」と笑顔で話した。 ▽重心安定に一役