三重県の新たな特産品「桑名もち小麦」 生産・卸・実需一体でブランド化
三重県桑名市の新たな特産品として注目される「桑名もち小麦」。生産者、食品卸、実需者らが一体となり、ブランド化を推進し、生産、販路の拡大につなげている。 食品卸、米農家、製パン店といった異業種の3人が、独特の食感を持つもち小麦の可能性を追求し、2009年に「桑名もち小麦プロジェクト」を立ち上げたのが始まり。農業体験イベントの開催や、もち小麦を使った商品開発を通じ、地域ブランドの確立に取り組んできた。17年には市や県、商工会、JAみえきたなどで「桑名もち小麦協議会」を発足。体制を強化した。 もち小麦は、もち性のでんぷん質を含んだ希少な小麦で、もっちりとした食感が特徴。高温で調理すればさくさくとした食感が、麺に加工すれば滑らかな喉越しが楽しめる。独特の食感を直接伝えようと、14年には「MuGi cafe(むぎカフェ)」をオープン。もち小麦を使用したパンケーキやパスタなどを提供している。 協議会は、地域連携にも力を入れている。種まきから収穫までの体験イベントは、家族連れでにぎわい地域振興への貢献も大きい。「桑名もち小麦」を使った商品開発や、地元特別支援学校での麦ストロー製作体験イベントなど、食農教育としての活用も進めている。タケノコ産地として知られる同市の竹を堆肥として利用することで、他産地産との差別化も図る。竹粉堆肥の実証試験では、収穫量増やタンパク質含有量の増加など、好効果が認められた。 ここ数年の生産量は15トン前後で推移しており、販路の開拓に力を注ぐ。ホットケーキミックスやパスタといった加工品を開発し、地元を中心に国内各地に販売している。 協議会の積極的な活動は、19年に地産地消等優良活動表彰の東海農政局長賞に、20年に農水省の「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」に選ばれた。同協議会の取り組みは、農業の新たな価値を創出し、地域振興の可能性を広げるモデルケースとしての期待も高まる。 協議会会長でプロジェクト立ち上げメンバーの一人でもある保田与志彦さんは「地産地消を軸に、桑名もち小麦の知名度を上げていきたい」と意気込む。 地域の特色を生かした新しい特産品の確立は、桑名地域の活性化に貢献するだけでなく、農業の新たな魅力を発信する機会となっている。
日本農業新聞