2024年沢村賞の記者会見に臨む選考委員長の堀内氏（撮影・小沢裕）

　故沢村栄治氏を記念し、シーズンで最も優れた先発完投型の投手に贈られる「沢村賞」選考委員会が28日、都内のホテルで行われ、19年以来、5年ぶりの「該当者なし」に決まった。 【比較表】選考基準を最もクリアしたのは戸郷／沢村賞選考基準と主な候補者の成績 　選考が長引き、発表は当初の予定より約45分遅れでスタートした。堀内恒夫委員長は「たくさんの選手の名前が出てきましたけども、一本化できませんでした。投高打低の時代。もう少し成績が上がってほしかった。最優秀投手賞ではなく、沢村さんの名前、権威がある賞。無理して選ぶ必要はない」と話した。 　候補として名前が挙がったのは巨人菅野智之投手（35）、日本ハム伊藤大海投手（27）、ソフトバンク有原航平投手（32）、巨人戸郷翔征投手（24）、DeNA東克樹投手（28）ら。最終的に戸郷と有原の2者に絞られた。選考基準全7項目のうち、クリアしたのは戸郷が4項目（奪三振156、防御率1・95、登板数26、勝率6割）、有原が3項目（防御率2・36、登板数26、勝率6割6分7厘）。突出した成績とは言えなかった。 　昨年までは山本由伸（オリックス）が他を圧倒する成績で3年連続受賞。堀内委員長は「基本的には1人、ベストピッチャーを選びたい。ここ3年は選考しやすかった。今年は甲乙付けがたい。たくさん名前が出るということは、成績が並んでいるということ。比べていっても1人にならなかった」と説明した。 　分業制が進み、完投10と投球回200をクリアした選手はいなかった。完投にいたっては日本ハム伊藤とロッテ小島の5が最高。選考基準の見直しについての議論はなかったが「完投とかイニングは、少し考えていかなきゃいけない。本当は変えたくないんですけど、少しずつ時代に即したものにした方が選手が（基準に）乗りやすい。時期を見て、そういう話し合いになる可能性はあります」とした。 　◆沢村賞選考委員（敬称略、就任順）　平松政次、堀内恒夫、山田久志、工藤公康、斎藤雅樹 　◆沢村賞　故沢村栄治氏の功績をたたえ、1947年（昭22）に制定。同賞受賞者または同等の成績を挙げた投手で、現役を退いた5人を中心とする選考委員会で決定。当初はセ・リーグ投手を対象にしたが、89年から両リーグが対象。受賞者には金杯と副賞300万円が贈られる。 　原則的な選考基準は以下の7項目。 　（1）15勝以上 　（2）150奪三振以上 　（3）10完投以上 　（4）防御率2・50以下 　（5）投球回200以上 　（6）登板25試合以上 　（7）勝率6割以上 　投手分業制を鑑み、「日本版クオリティー・スタート（仮称＝QS）の達成率」も考慮の対象になる。