富士山「当確」で注目、あらためて世界遺産とは
世界遺産とは、未来へと伝えていくべき「人類共通の遺産」のことで、世界遺産条約のなかで定義されています。観光名所というイメージが強いかもしれませんが、条約によれば「損傷、破壊等の脅威から保護し、保存する」のが目的です。2013年4月現在、962件が登録されています。富士山は4月の勧告を受けて、6月に開かれる第37回世界遺産委員会で、正式に登録される見通しです。
世界遺産には、(1)遺跡や文化的な景観などを対象とした文化遺産、(2)地形や生態系、動植物の生息地などを対象にした自然遺産、(3)文化遺産と自然遺産の両方の価値を兼ね備えた複合遺産、の3つがあります。文化遺産は745件、自然遺産は188件、複合遺産は29件が登録されています。富士山は古来信仰の対象だったことなどから、文化遺産としての登録を目指していました。 世界遺産へ登録されるには、まず国が暫定リストを作成し世界遺産委員会へ提出します。その後、条件の整ったものを世界遺産委員会に推薦、専門機関(文化遺産は国際記念物遺跡会議=ICOMOS、自然遺産は国際自然保護連合=IUCN)による調査が行われます。この調査結果をもとに、世界遺産委員会において登録するかどうかが決定されます。 日本では、1993年に法隆寺(文化遺産)や屋久島(自然遺産)など4件が初めて登録され、現在までに12件の文化遺産と、4件の自然遺産が登録されています。最近では、2011年の小笠原諸島や2005年の知床(ともに自然遺産)、2007年の石見銀山(文化遺産)の登録が話題になりました。富士山は、2007年に暫定リスト入りし、2012年にユネスコへ推薦書を提出。同年8~9月にかけてICOMOSによる現地調査が行われました。 世界遺産への登録を目指す理由のひとつは、経済効果でしょう。たとえば、2007年に登録された石見銀山。島根県観光動態調査によると、登録前の2006年は40万人だった観光客数が、2007年に70万人、2008年には80万人に達しました。その後は40万~50万人程度と、以前と比べて高い水準で推移しています。一方で、環境負荷の高まりが問題視されている遺産もあります。